
実は、わたくし霧立は、中高一貫校の教師だった。自由な校風のとても良い学校だったのだが、引っ越しを機に退職。そんなわけで、今日は元教師目線で、学校教育へのiPad導入について考えてみたい。
学校でのiPad、タブレットの普及率
我が家の子ども、ユウが通うイギリスの小学校では、授業で時々iPadを使う。アプリを使ってやる算数の宿題も出る。
ただでさえ現代の子どもたちはスクリーンタイムが多い。スクリーンタイムを制限するのに苦労している家庭が多い中、わざわざ学校の授業にまでiPadを導入するのはどうなんだろう?
2014年の調査によると、イギリスではiPadやタブレットを授業で使っている小・中学校は70%にのぼると言われている。2019年現在では、普及率はおそらく80%を超えていると思われる。
日本はどうだろうか?2018年の調査によると、タブレット型PCを校内に1台以上導入している高校は、33%!
これはイギリスと比べるとかなり低くて驚いた(しかも「校内に1台以上」ってナニ?!)。我が家のユウが通っているのは、ごくごくフツーの公立小学校だが、授業で使う時は1人1台iPadが渡される。(彼の小学校には全部で約60台あり、1年生~7年生までで融通しあっている。)
しかし、日本の高校でも「1人1台配備」の普及を目指しているという。高校でさえこのような感じだから、小学校での使用は、まだまだ考えられてないのが実情のようだ。
iPadのメリット
学校教育でiPadを使う利点は何だろう?
1.楽しい!
子どもたちはiPadを使ったほうが、楽しく学べるという報告が色々なところで出ている。ユウに聞いても、「いつもは全然やる気のない子でも、iPadを使う時は楽しそうにやっているヨ」と言う。
まあ、想像はつく。iPadなどは子どもにとって「遊び」感覚で使えるわけだ。
2.紙の節約

教育現場では確かに大量の紙が使われる。授業ごとに、説明のプリントやら、豆テストやら、宿題のプリントやらが毎回配られ、とにかくプリント尽くし!!
iPadを使えば、それがゼロになるわけではないが、かなりの節約になることは間違いなさそうだ。
3.データ管理がラク!!
学校現場では、「プリントがどこかいっちゃった~、センセーもう1枚くださぁい」「センセー、先週学校休んでいたのでプリントもらってないです~(配ったっつーの!)」「No.1はあるんですがNo.2と3のプリントがないからくださぁい」という超ウルトラスーパー面倒なことが日常茶飯事で起こる。
霧立はだいたい毎年200~250人の生徒を担当していたので、そんなことを10人くらいの生徒に言われた日には、ただでさえ忙しのにもう発狂しそうになる。だからデータで管理できるというのは教師にとっても生徒にとっても、とっても嬉しい(はずだ)。
4.重い教科書とオサラバ

教科書は重い。中学や高校になると科目数も増えて、教科書の種類も多くなる。確かにパンパンに膨れ上がったカバンを持って通学するのは辛かった記憶が。iPadならそれが解消されるというわけだ。
また、「教科書忘れましたー」という問題も回避できる。iPadを忘れなければ…の話だが。
5.情報へのアクセスが簡単
「ググる」という表現があるが、分からない事でもインターネットで調べれば、たいがいのことがすぐに分かる時代となった。これは非常に便利。
昔なら教師に質問していたようなことが、自分で解決できるようになる。1人の教師が知っていることは限られていることを考えれば、iPadによって膨大な情報量へアクセスできることは、とてつもなく大きな知的冒険の可能性を広げる。
6.ITスキルが表現力の幅を広げる
知識はインプットするだけでなく、アウトプットすることが大事だ。相手に分かりやすく伝えるには、グラフやイラストなど視覚にうったえるものが効果的な場合も多い。
わたくし霧立もブログなんかやっていると、(ここは本当はイラストでカッコよく説明したいところなんだけどなぁ~!)ということがしょっちゅうある。しかし、絵がドヘタなのでとてもイラストなんて描けないし、かといってITスキルも最低限しかないので、こうやってズラズラ書くことになる…。
これからは、学校でプログラミングなどのITスキルをぜひ教えるべきだと思う。絵が苦手な子どもでも、ITスキルがあれば分かりやすいプレゼンテーションが可能になると思うからだ。

また、霧立が教師をやっていた時は、説明のために黒板に絵を描くと、必ず生徒にゲラゲラ笑われたものだ。絵が下手な教師にとっても、iPadは救世主的なツールになること間違いなし!
7.板書がミニマムに
板書は、実にやっかいだ。そして日本の学校の授業は、やたらと板書の機会が多いので、板書が授業を左右することもある。
- 板書に時間を取りすぎると、授業がもたつく。
- スペースがなくなると、古い方から消していかなければならない。
- 教師の字が下手だったり、スペースの使い方が下手だと、生徒のやる気が低下する。
- ノートをとるスピードは生徒によってかなり差がある。
- ノートに写すのに一生懸命で、肝心の内容を理解していない生徒が意外に多い。
特に「きれいにノートをとりたがる」生徒の場合(それは大切なことでもあるのだが)、理解がおろそかになることも。だから霧立はしょっちゅう、
「ノートとる時間はあとであげるから、まずは説明を聞いて!」
と言わなければならなかった。でも、iPadに板書内容を一括送信できるなら、板書にかけていた時間を、説明や意見交換の時間にもっと有意義に使える。もちろん、それでも板書が必要な場面は出てくると思うが、ミニマムにできるのだ。

まとめ
ただでさえ、スクリーン時間が多い現代の子どもたち。学校現場でiPadやタブレットを使うのは、どうかな?と初めは懐疑的に思っていた霧立だが、案外メリットはあるものだと思った。
しかし、やはりデメリットもたくさんあることに気付いた。特に、 イギリスのように小学校低学年からiPadを授業で使うのは、メリットよりもデメリットが大きいと思った。 デメリットについては、次回書いていきたい。