日本では友人と飲みに行ったり、カフェに行ったとしても、割り勘が当たり前だった。ところが、イギリスに来てから食事はともかくとしてドリンクでは滅多に割り勘にしないことに気が付いた。
今日は、
- デートなど親しい間柄で出かけて、その都度会計を割り勘にするのもなんだかスマートでない気もする…
- でも、おごられっぱなしも気が引ける…
と思っている人に向けて、割り勘はしないけれど公平なイギリス人のスマート会計を紹介したい。
割り勘はスマートじゃない?
公平なイギリス流「おごり合い」
イギリス人は割り勘はしないのだが、実はそれでも公平になるようになっている。というのも、順番でお互いに「おごり合い」をするからだ。
パブの「ラウンド」
イギリスのパブでは、テーブルで注文をしない。カウンターに行って注文をし、その都度支払いをする。
友達とパブに行った場合、一人一人がカウンターで注文せずに誰か一人が代表してグループのみんなの分を注文して代金を払い、飲み物をテーブルまで運ぶ。
みんなが飲み終わったら、今度は別の人が、
「じゃ、こんどはボク(私)が買いに行ってくるよ!」
と注文に行く。早めにオファーすることがスマートでフレンドリーな印象を与えるのは言うまでもない。
これをグループの中で順番にやっていく。グループの人数が少なかったり、「呑み助」が多い場合は「セカンド・ラウンド」に突入することも。
ある調査によると、パブでのラウンドではたいがいの場合、最終的に公平な支払いになっているという。ラウンドアバウトもそうだが、イギリス人は平等なシステムを作る天才なのかもしれない。
しかし、「そりゃ公平性が高いけど、人数が多い場合、結構な出費になるよね?」と霧立は思ってしまう。実際、このラウンドが原因で借金する人まで出てきて、ちょっとした問題になっているようだ。
イギリス人は礼儀正しいので、自分の番になるとおごってしまうのだが、実際は結構ラウンドは嫌だなあと思っている人も多いという。「自分の番になるとトイレに逃げ込んでやり過ごす」というのが冗談として語られているくらいだ。
また飲みたくもないのに、自分がおごった後は(飲まなきゃ損!)とばかりに、注文に乗っかる人もいるのも想像に難くない…。
パブでのこのラウンドは、昔からの「人付き合いの円滑油」みたいなものだったらしい。お酒が入ってつい議論が白熱しても、このラウンドシステムを通してお互いに友情を示すことが出来るのだ。
そもそも、家で飲まずにわざわざパブに行くのは社交が目的。ためらうことなくラウンドのオファーを買って出ることは、重要な社交術というわけだ。
カフェの「ラウンド」
霧立は、滅多に夜パブに飲みに行くことはない。しかし、友達とカフェに行くことはある。実は、カフェでもこのラウンドの「おごり合い」が適用されている!
カフェではビールと違って5杯も6杯もコーヒーを飲む人はいない。だから、「その日誘った人がみんなの分を払う」というのが、なんとなく暗黙の了解になっている。
次にカフェに行くときに、前回ご馳走した人とは別の人が
「じゃ、今日は私が!」
といって注文するのが常になっている。さりげないんだけど、実はみんなよ~く覚えている。いつ、どこで、誰が払ったかを!!
ある時、テレサという友人に二人でお茶に行こうと誘われた。別に、そこまで仲の良い友人というわけではなかったのだが、そこそこの付き合いがあった。
当日はテレサがお目当てのカフェも決めておいてくれて、そこに連れて行ってくれた。しかし!!
カフェに着くやいなや、テレサは一人でさっさと席に座って携帯をチェックし始めた。
(あれ…、ワタシ、どうするべきデスか…?)
一人立っていた霧立は一瞬固まったのだが、
(ええい!もういいや!私が買いに行こう!)
と決意を固めて
「私、買ってくるよ。何がいい?」
と言った。そしたら、
「じゃ、カプチーノお願い。えーっとそれからベルーベリーマフィンも」
とスィーツの注文まで受けた。支払をして、ドリンクとマフィンを持って帰っても、
「ありがとね~。あら、フォークとナイフがないわね…。」
という感じで結構あっけにとられた。テレサは、いつも女王様みたいと思っていたけど、やっぱり女王様だった。霧立は…
しもべ??
ちなみに次にまたテレサが誘ってくれた時も彼女は泰然として払ってくれる様子でなかったので、この時は悪いけど霧立は割り勘にさせてもらいましたヨっ!!
(もう、テレサ、イギリス文化いい加減に学んでよ!!霧立よりずっと長くこの国に住んでるでしょーが!)
*テレサはオーストラリア人。彼女の女王様ぶりは、こちら!
お金の話が苦手なイギリス人
テレサのような人がいると、ラウンドシステムは面倒くさい!と思ってしまう。日本人の割り勘が一番明瞭会計で楽!
でも、イギリス人はどうやらお金の話をするのが苦手なのだということが分かった。日本人のようにテーブルで、細かく各人の支払いを携帯で計算するようなことは、絶対にしない。
イギリス人はものをハッキリ言わない。いつも回りくどい言い方をする。ましてや「あなはのカフェ・モカは3ポンド20ペンスね!」などと言って、割り勘の請求するこはあり得ない。
イギリス人にとってハッキリものを言うこと、ましてやお金の請求をすることはスマートではないのだ!
まとめ
友達や付き合っている人と飲みに行ったり、カフェに行ったりする時の第一の目的は、実際の飲み食いというよりも付き合いを深めるためだろう。ただ胃袋を満たすだけなら、わざわざ電車やバスに乗って出向く必要もあるまい。
イギリス人のラウンドは、まさに相手との関係を深める処世術なのだ。どうせ長期的に見ればトントンになる会計なら、気持ちよくおごったり、おごられたりするのも悪くない。
それからこのラウンドシステムはかなり平等なので、男女平等やフェミニズムとも相性がいいのかもしれない。「女だからおごられて当然」という態度は、ちょっとどうかと思う。
同性の友達の間でも、カフェで友達がコーヒーをご馳走してくれたらそれだけで結構うれしくなるもの。たかが数百円で友情を温められるなら安いもの!
しかもその友達も「じゃ、この次は自分が…」ときっと思ってくれるはずなので、お財布は実際全然痛まないのだ。その人がテレサのような人でない限り…。