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その子育てが、不寛容な社会を生む

子育て&教育· 文化の交差点

29 3月

子育てと非寛容社会

「他の人に迷惑をかけないようにしなさい」「早くしなさい!」。

多くの人は、このように言われて育てられ、またこのように子育てしているのではないだろうか?

わたくし霧立灯は、イギリスで暮らすようになって度々イギリス社会の寛容さに心打たれてきた。それに比べて、日本はきちんとしているのだが、時に冷たくマイノリティーや弱者に不寛容な社会であることに気付かされる。

社会が寛容・不寛容へと分岐する道のりは、子育ての段階で決定づけられていると思うのだ。

「他人に迷惑をかけないようにすること」、「時間厳守」は大切である。しかし、行き過ぎると黄色信号だ。不寛容のメンタリティーがそこには見え隠れする。

コンテンツ

  • その子育てが、非寛容な社会を生む
    • バスの中の事件
    • 「人に迷惑をかけてはいけない」の呪縛
    • 親の価値観が子育てにあらわれる

その子育てが、非寛容な社会を生む

バスの中の事件

先日、Twitterで非常に気の毒な子育て中の女性のツィートを読んだ。かいつまんで話すとこういうことだった。

バス停で待っている時、娘がぐずったのでベビーカーから抱き上げ、抱っこ紐の中であやした。持っていた荷物はカラのベビーカーに入れた。

バスが到着し、混んでいなかったので荷物の入ったベビーカーを畳まずにバスに乗り込んだ。そうしたら運転手から「それ(子どもが)乗ってるの?乗ってないなら乗り物じゃないからすぐ畳んで」と言われた。

ベビーカーには荷物が入っているし、彼女は赤ちゃんでを抱いている。「申し訳ありませんが、このままではダメですか?」と聞いたが、運転手はダメの一点張り。

仕方がないから赤ちゃんを抱えたまま、前かがみになってベビーカーを畳もうとしたら、赤ちゃんが床に落ちそうになった。近くにいた女性が、抱っこ紐のバックルを勝手に外したのだった。

運転手は、まだ畳んでもないベビーカーを無視し、この母親が前かがみで不安定な体勢で赤ちゃんを抱き留めた状況でバスを発車させた。

危ないと判断した女性は、ベビーカーの中の荷物を投げ出し、ひとまず赤ちゃんをベビーカーに固定し、荷物を拾って次のバス停で下車するはめに。

下車した後、この女性は「起こりえた事故」を想像すると恐怖で、震えと涙が止まらなくなり、しばらくその場を動けなかった。

彼女はこう続けている。

子連れが偉いとか、優遇されるべきだとはこれっぽっちも思っていません。ベビーカーや突き出た抱っこ紐やリュックで場所を取ってしまうことをいつも心苦しく思っています。赤ちゃんが泣けば周囲に迷惑をかけないように必死にあやしています。

至らずに不快な思いをさせてしまうことがあるかもしれないが、どうか命の危険を感じる行為だけはしないでください。

なんとも痛ましい…。

我が子の危険に心臓が凍り付くような思いをしただけでなく、社会の冷たさに心がつぶれる思いだっただろう。

「人に迷惑をかけてはいけない」の呪縛

親の感じているプレッシャー

私はこのツィートを読んだ時に、この女性は子連れでどこへ行くにも、さぞかしストレスで大変だろうと心から気の毒になった。

「赤ちゃんとお出かけ」というと、ほのぼのと聞こえはいいが、実際は言葉ほど甘くないのである。経験したことのある人なら分かるが、赤ちゃんがベビーカーの上でスヤスヤ眠っているのはまれ。

ベビーカーに乗ってなく赤ちゃん

ぐずったら抱いてあげなくてはいけないし、そうするとカラのベビーカーも運ばなくてはならない。また「ちょっとお出かけ」でも、常に一泊旅行なみの支度で出かけなければならないのである。

このようにまず、物理的に負担が大きい。

しかし、この投稿者の女性は、痛々しいほど「周囲に迷惑にならないように」常に気配りをしていのだ。

運転手の感じているプレッシャー

この運転手を「ひどい運転手だ!」と一蹴することは簡単だ。しかし、よく考えればこの運転手もまた、「人(=乗客)に迷惑をかけてはいけない」というプレッシャーの下で、人としての優しさを失ってしまっているのだ。

運転手は、「時間に正確に運行する」という絶え間ないプレッシャーにさらされ、分刻みの中働いている。それは、バスが遅延すれば乗客に「迷惑がかかる」からだ。

事実、私たちは電車やバスが2分も遅れれば不安になり、5分遅れれば多くの人が不満に思う。車内アナウンスでも、

「ただいま〇〇駅を30秒遅れて発車いたしました。お急ぎの中、ご迷惑おかけし、大変申し訳ございませんでした」

とアナウンスが流れる。

このたった数十秒の遅延に対する謝罪アナウンスは、イギリスでは大きな驚きをもってメディアによって伝えられた。イギリスでは5分10分の遅延は日常茶飯事なのだ。

時間に正確な日本の電車

日本の電車の時間の正確さは、世界でも類まれである。

日本の公共交通機関の運転手は、遅延して乗客に迷惑をかけることを気にするあまり、弱者を思いやる心がすり減ってしまっているのだ。

社会の隅々にまで浸透している呪縛

この「迷惑をかけることは絶対悪」という呪縛は、日本社会の隅々にまで浸透している。これは、海外で暮らして初めて気が付いたことだ。

例えばイギリスでは、スーパーのレジや窓口などで、どんなに後ろが行列になっていようとお構いなしだ。自分の用事が納得のいく形で処理されるまで、自分の権利を行使する。

レジで後に人が待っていても気にせずに話をする

レジで後ろに人が待っていても、欧米人は平気で色々話をする。

ところが、日本では自分の後ろに人が並んでいるだけで、

(次の人に迷惑にならないように急いで済ませなくちゃ!)

と無言のプレッシャーを感じてしまう人が多いのではないだろうか?

また、日本では芸能人の不倫騒動が持ち上がると当事者が出てきて、

「世間をお騒がせし、大変ご迷惑をおかけしました」

と頭を下げる。一番迷惑で悲惨なのはその家族で、他人は誰も迷惑なんて被ってないのに…。

「自己責任論」もしかり。シリアで拘束されたジャーナリストの安田順平さんは、「どれだけ国に迷惑をかけたのか」とネットで誹謗中傷された。

幸い人質から解放されても「皆さんには、大変ご迷惑おかけしました」と謝罪しなければ済まされない。本人や家族が頭を下げている姿から、日本社会の冷たさが透けて見えてくる。

一方、フランスでは「フランスにリスクをとる記者がいるのはいいことだ」と言って、大統領が自ら人質から解放されたジャーナリストを出迎えた。「国に迷惑をかけた人」という評価と雲泥の差ともいえる破格の対応である。

親の価値観が子育てにあらわれる

「人に迷惑をかけてはいけない」というこのような強い規範意識は、多くの日本人が育てられてきた中で身につけてきたものだ。それ自体は悪いことではない。むしろ、イギリス人の子どもたちはもっとそういったことを教えられた方がいいんじゃないかと思うことすらある。

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しかしそれが行き過ぎると、私たちは「世間の目」を絶対化し、個人の利益よりも社会全体の利益を優先するようになってしまう。自分の権利を主張するのをあきらめたり、全体の利益を損なう者を平気で批判するようになる。

またそのような親の価値観は子どもに伝わる。しかし、私たちが育てたいのは、規範意識のやたらと強い、冷たい人間ではないはずだ。

「人に迷惑をかけてはいけない」ではなく、困っている人を助けることを親が率先して教えたい。ベビーカーを畳めくて困っている親がいたら、冷たい視線で批判するのでなく、声をかけて助けてあげること。

そうすることで、「困ったときは助けてもらっていいんだ」と子どもは思えるようになるし、困っている人を助けることも自然に出来るようになる。

助け合うことを学ぶ子ども

助けてもらうことも、助けることも、もっと自然に出来る社会ならいいのに。

欧米では、ベビーカーで手間取っている人がいると、近くにいる人がささっと手助けする。助けた人も、助けられた人も、それが特別なこととは思っていない。

ごく自然なやり取りなのだ。そこには「迷惑」という意識はみじんも感じられない。

私は時間に遅れるのが嫌いなため、子どもにも「早くしなさい!」とよく急き立てたものだ。その結果、我が家のユウ(8歳児)は、少しでもスイミングのレッスンに遅れそうになると極度に不安になってしまう。

(かわいそうなことをした…)と反省している。母親の切迫感は子どもに伝わってしまっていたのだ。

飛行機に乗り遅れるならまだしも、日常生活で8歳児がそこまで時間に正確でなくたっていいではないか、と今は思うようになった。

大幅にいつも遅刻するのは問題だが、「ちょっと遅れたって大丈夫」くらいの気持ちでいたほうが、他人の遅刻にもおおらかな人間に育つのではないだろうか?「早くしなさい!」とせかすのは、出来るだけ慎みたいものだと思う。

親の規範意識は、子どもにそのまま受け継がれる。日本社会が弱者に寛容な社会になるかどうかは、私たちの子育てにこそかかっている、と言っても過言ではないだろう。

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