横断歩道は、歩行者が優先され、道路を安全に渡れる場所。ドライバーは歩行者がいたら横断歩道手前で停止しなければならない。
これは横断歩道が存在する国ならば、世界中で定められている交通法規、のはず。しかし、国によってドライバーの反応にはかなり幅があることが分かった。
横断歩道で歩行者に優しい国、そうでない国について調べ、そこから見えてくる文化の違いを考えてみた。
横断歩道の各国事情
まず初めに、わたくし霧立灯は全世界の国々を網羅的に調べたわけではないことをお断りしておきたい。あくまで、霧立の体験と情報網に引っかかったものだけを整理してみた。
歩行者に最も優しい国
- イギリス
- カナダ
- オーストラリア
- スイス
- オーストリア
- ドイツ
- ベルギー*
- アメリカ(一部の州)
上記の国々では、歩行者は守られるべき弱者と認識され、横断歩道では100%優先される。横断歩道で歩行者がいるのに車が停止しないことはあり得ない。
横断歩道でない場所でも歩行者が道路を渡ろうとしていたら、車は状況が許す限り停止して歩行者を先に渡らせてくれる。(都会の大きな道路や車のスピードが出ている場合を除く。)
またイギリスでは、交差点での信号はすべて車歩分離式になっている。つまり、歩行者信号が青になっている時は、全ての方向の車は停止しているので、車による歩行者の巻き込み事故などは起こりようがない。
今、ベルギーに滞在しているのだが、ベルギーは思いのほか車が止まってくれない!信号も車歩分離式でないし、歩行者はそれなりに注意が必要だ。

オランダは平坦なので、自転車で移動する人がかなり多い!アムステルダムは特にそうで、車より自転車が幅をきかせているという。
歩行者が車を止めて横断歩道をわたる国
- イタリア
- スペイン
- フランス
- ギリシア
- ポーランド
北ヨーロッパの国々は、たいがい歩行者優先の傾向にあるのだが、南ヨーロッパは少し事情が異なる。横断歩道を渡るには、歩行者が積極的に車を止めなければならない。
まずはイタリア。
霧立一家がイタリアに旅行したとき、道路を横切るのは命がけだった。横断歩道があっても一向に車は止まってくれないのだ!
しかも、横断歩道も歩道橋もさっぱり見あたらない交通量の激しい道路も結構ある。そのうえ、私たちは小さな子連れ。
一体どうやってここを渡れと言うの?!
数日間オロオロしていた霧立一家だが、ある時、現地の子どもが道路を渡る場面に出くわした。その子は、車がバンバン来ているのに道路に足を踏み入れたのだ。そうしたら、一斉に交通の流れがストップしたのである!!
モ、モーセ?!
子どもは、悠々と横断歩道を渡って、無事に向こう側にたどり着いた。
イギリスでは横断歩道に立つだけで全ての車がさっと止まってくれるのでその調子でいたのだが、イタリアではそんな控えめな態度ではダメなのだ。
自分から横断歩道に突っ込んでいく!くらいの気持ちで車を止めるのがイタリア流横断歩道の渡り方だと分かった。
車はクラクションを鳴らすわけでもなく止まってくれるので、「歩行者優先」という原理はある意味保たれていると言ってもいい。しかし、命がけ…。あれはストレスだった。
スペインも同様だ。黙っていても車は止まってくれない。自分から渡り始めるか、手をあげて車を止めないといけない。
歩行者が車に道を譲らなければならない国
- 中国
- 日本
- ポーランド
- 韓国
- フランス
- ギリシア
車が歩行者より優先される社会。歩行者用の信号機がある場所では安全に渡れるが、信号機がない横断歩道では車がいなくなったのを見計らって横断しなければならない。
日本では、歩行者がいたとしても90%以上のドライバーは横断歩道で止まらない。その理由は、
- 止まると後続の車にあおられる。
- 渋滞になる。
- 自分が止まっても、後続の車が右側から抜かしていく可能性がありかえって危険。
などなど。
横断歩道で歩行者がいるのにかかわらず一時停止を怠ると、本来は明らかな違反であり、罰金(反則金)は9000円となる。しかし、警察はスピード違反の取り締まりはこまめにやっているが、横断歩道は野放し状態。

どうせだったら、歩行者を無視して横断歩道に侵入した車にもっと目を光らせてもらいたいものだ。
またフランスも、「フランスの横断歩道で歩行者のために止まるのは、イギリス人のドライバーだけ。」と言われるほど、横断歩道で止まらない。
だから、珍しく車が止まってくれても、歩行者は警戒してなかなか渡らないという。なんとなく日本の状況と似ているような…。
そういえばフランス旅行中、横断歩道で我が家のユウ(当時6歳)が車にひかれそうになった。血の気も凍るような瞬間、私は悲鳴を上げた。
公共の場であんなに大きな声を出したことは人生で一度もなかった。恐怖のあまり涙目になってしばらく震えがとまらなかった。
しかし、ドライバーの顔には悪かったという表情は全くなかった。
最後にアメリカ。
アメリカは州によってだいぶ違う。ニューヨークなど、電車の利用が多い地域では歩行者は守られている。
しかし、人々の移動手段が車に限られるような地域では、毎年交通事故で多数の歩行者が命を失っている。ニューメキシコやフロリダは歩行者にとってとても危険な州だと言われている。
そのような場所では、
歩道は「駐車場」だと見なされ、必要なものとは認識されていない。横断歩道は嫌われ、注意を払われていない。歩行者が横断歩道を渡ろうとしていると、多くのドライバーは気でも違ったようにスピードを上げる。(拙訳)
というありさま。
私は学生時代にシアトルに住んでいたことがあるが、シアトルは歩行者も多かったため、ドライバーは必ず横断歩道で止まってくれた。車が幅を利かせている地域ほど、歩行者は守られていない。
歩行者がとても危険な国
- 南米
- 東南アジア
- インド
このような国々で歩行者は完全に無視されている。横断歩道を渡るのは、経験と「技術」がないとまずムリだ。百聞は一見にしかずで、この動画をご覧あれ。
このように渡るようです。古武術の達人のようだ。 pic.twitter.com/MFg1A4Fsro
— 竜生九子博物館館長 (@kyouinoheya) 2019年5月10日
横断歩道の意味はまるでなし。
インドについては、
警察官が横断に立ち会っていても、車に人がはねられるのを1度ならず見た。インドに行ったことのない人には分からないだろう。
と証言している人がいる。ブラジルでも、横断歩道に車が止まっているのは日常茶飯事らしい。
もはや横断歩道は全く意味をなしていない国々のようだ。
まとめ
「欧米は歩行者(弱者)に優しい」というイメージがあった。しかし、それは実際には北ヨーロッパ、オーストラリアと一部の北米の話であり、南ヨーロッパではだいぶ事情が違うことが分かった。
歩行者に対する思いやりは、その国々の「弱者」に対する姿勢や、経済的・文化的な余裕の表れのように思えた。
外国に旅行に行くときは、事故に遭わないようにくれぐれも気を付けたいものだ。特に北ヨーロッパ式に慣れてしまっている人は、「横断歩道だから安全」と思わぬように!
日本に帰ると、歩行者のみんながちゃんと信号が変わるまできちんと待っていて、偉いなあと思います。でも、それはきっとひかれる恐れがあるからですよね?Jウォークするとお巡りさんに捕まるんでしたっけ?
私が2年間行った4年制大学のあるアメリカはミシガン州アンアーバー。ここは車が人に優しいのか、人が車に優しくないのか、車が来ているかどうかも確かめずに、道路を渡るのが普通です。卒業式の時に、学長か誰かの挨拶で、街の交通整備課の一番偉い人と歩いていたら、例にもれず、そのお偉いさんも、車の往来を確かめず、迷わず道を渡り始めたという逸話を聞きました。車の運転する方がヒヤヒヤするのがアンアーバー。
北カリフォルニアに住んでいる時には、まだ日本から出て間もなかったので、きちんと信号は守って歩行者してました。でも車に吹っ飛ばされました。車にはねられて1−2メートルは飛んだかも。
そして今住んでいるマサチューセッツ。みんな急いでいるのか、信号のない横断歩道で止まってくれる車、少ないですね。私も時々、渡ろうとしている人に気づかなくて、ごめんなさーいと心の中で言いながら、過ぎていくことがあります。ただ、よくカモとか、七面鳥とかが道を渡っているので、そういう時にはみんな止まってます。なんでこんなところで渋滞が!ってイライラし始めても、あ、なんだ動物の親子かって思うと、ほっこりしますね。
旦那がインドに出張によく行っていた時には、インドって交通規制という言葉がないんだなあと思わされました。
エラちゃん目の前に座っています様(ほう、そうですか…。)
コメント、ありがとうございます!
アメリカの州による違いが分かって、よい「補足」になりました。
日本はJウォークで捕まりはしませんが、警官に見られたら注意されるようです。
ちなみにイギリスでは「Jウォーク」という言葉も概念もありません。
歩行者が自分で確認して渡るのがリーガルだからです。
面白いですよね。
北カリフォルニアでは怖い体験をされましたね。
大きな怪我になりませんでしたか?
歩行者用信号に従って横断したのに跳ねられるって、どうゆうことでしょう?!
酷いですね。
ミシガンの話はシアトルみたいだなあと思って聞いていました。
あまり左右を確認せずに横断してもあまり心配ないですね。
ただ、アメリカは州によってかなり違いが激しいので、他州に行くときは要注意ですね。
カモや七面鳥の話は、複雑な思いで読みました。
日本でも、イギリスでもそうなのですが、人々は野生動物にはとても優しいのに、家畜は平気で殺して食べますよね。
同じカモや七面鳥なのに…って思ってしまいます。
とにもかくにも、横断歩道は国によってこんなに事情が違うって面白いですよね。
国民性や文化が伺えますね。
霧立灯
北カリフォルニアでの交通事故ですが、これは赤信号でも右折して良い州ならではの事故だったと思います。3つ住んだ州全てが、確か、してはいけないという標札がなければ、一旦停止してから赤信号で右折して良い州なんです。私が横断歩道を渡っている時に、右折車が前方不注意で私を跳ねました。これもまた場所が違えばルールも違うのを表していますよね。
野生動物には優しいのに、家畜は食べる。。。ベジタリアンになろうと考えていたりベジタリアンだったりすると考えることですよね。私も大学時代からしばらくはベジタリアンになろうとしていました。チキンとターキーと魚介類は諦めることができず、今でも食べていますが(今日の夕飯もチキン)、牛、豚、など哺乳類は食べるのをやめました。どこの州だったかな、誤って車で轢いて殺してしまった野生動物は、持ち帰って食して良いという法律があったの・・・。モンタナ州に住む旦那の義理兄は猟をするので、自分でシカを撃って食料にしています。なんか文化が違います。
エラ様
「赤信号でも右折しても良い」というのはコワイですね。
歩行者もうかうかしていられませんね。
でも、大怪我にならなくて良かったです。
私はお肉から遠ざかっていくうちに、味そのものが「美味しい」と思えなくなりました。
今でも魚介類はたまに食べているんですが別に肯定するつもりもなく、「考え中」っていうところです。
野生動物のハンティングは、家畜よりマシだと思います。
撃たれる瞬間まで、自然の中で自由に生きてきたし、ハンターから逃げる余地もまだ与えられているからです。
でも家畜は生まれた瞬間からモノ扱いで、自由はゼロ。
人間に殺されるためにだけ存在する、というのがフェアではないと思っています。
霧立灯