愛するペットが年老いて、生きるのが困難になってきたら、あなたはどうするか?
あまり考えたくもないことかもしれない。私もそうだ。
霧立は、家族に見守られる中、安らかに自然に眠るように息を引き取ってもらいたい…なんて理想を思い浮かべていた。しかし、そんな幸せな最期を迎えられるペットはめったにいないそうだ。
今日は、重いテーマだが、ペットの安楽死という看取り方について考えてみたい。
愛するペットの看取り方
日本の場合
日本人にとって家族のようなペットを安楽死させるというのは、受け入れがたい。天寿を全うするまで世話をしてあげたい、と思う人が多いのではないだろうか?
だから、日本では老犬の介護グッズが充実している。老犬の紙おむつはスーパーに売っているし、自力で排泄が出来なくなっても飼い主が腹部を押すなどしてサポートすることも珍しくない。
動物といえども「安楽死はタブー」。日本では「最期まで介護するのがよい飼い主」というイメージがあるのではないだろうか?
イギリスの場合
我が家のみかん(ラブラドール14歳)は、近頃老化のペースが加速している。2か月単位で目に見えて悪化している。
友人や犬を散歩している人と話すと、
“Maybe you will have to think about putting her to sleep in the near future…”
(「近い将来、安楽死を考えなくてはならないかもね…。」)
と言われることが多い。遠まわしだが、”put to sleep”というのは「安楽死」を指している。
初めは(”Putting her to sleep”?! 絶対そんなことはしない!)と思っていたが、あまりに多くの人が言うので初めて「安楽死」というものついて考えるようになった。
安楽死を意識しだしてから気が付いたのだが、そういえばイギリスでは老犬介護用品を見かけない。犬用の紙おむつなど見たこともない。
犬の数は日本に比べたら多いはずだが、みかんのような老犬はとても少ない。人々がみかんを見て安楽死を口にする人が多いことと、関係しているかもしれない…。
ペットの終末期医療の飼い主の対応についての研究をしている杉田陽出准教授によると、日本では、獣医一人当たりの安楽死処置件数は年間で3件未満だという。対してアメリカでは年間90件を超えるという。単純に計算して、30倍以上の処置数だ。
イギリスの統計がなくて申し訳ないが、周りの人の反応からしておそらくアメリカと似たようなものだと思う。イギリスではペットの安楽死は珍しいことではないのだ。
この差は一体何だろう?
先日獣医に行ったとき、実は獣医からも将来的に安楽死の選択肢を提示された。その時、獣医は何度か“Quality of life”という言葉を使った。
一般的な「クオリティー・オブ・ライフ」の定義を犬に当てはめると、次のようになるだろう。
その犬がどれだけ犬らしい生活をし、生活に幸福を見出しているか、ということを尺度としてとらえる概念。

犬の走る姿は美しい。
イギリス人は、「ペットのクオリティー・オブ・ライフを優先することが飼い主の役割」と考えているのだ。
安楽死の判断の基準
安楽死の選択はとても難しい。そのタイミングも難しい。
しかも、どうしても感情的になってしまうから、前もって冷静によく考える必要がある。あとで後悔したり自分を責めたりするのは避けたい。
安楽死の判断、またそのタイミングは飼い主にしか出来ない。しかしペットの様子をよく見て、彼らが何を言おうとしているのか、耳を傾けることは大事だ。
- 強い痛み
- 自分で飲食が出来ない
- 歩行困難
- 排泄が自力で出来なくなる
- 精神や記憶の混濁
- 呼吸の困難
- 長引く痙攣
このようなことが問題になったら、獣医にすぐ相談する。そして、一定期間観察して、良くなっているのか、それとも悪化しているのかを客観的に把握する。
もちろん、急激な症状の場合、一定期間観察することが許されず、早い決断が迫られることもあるだろう。
しかし、そうでない限り、あなたのペットが生きていて幸せなことの方が多いのか、苦しいことの方が多いのかを冷静に見つめることが必要だ。
我が家の場合
みかんは、もうすぐ15歳になるラブラドール。後ろ足の関節炎のため、2年前くらいから歩ける距離が徐々に少なくなってきた。
痛み止めの薬も含めて、3種類の薬とサプリメントを服用している。
散歩の距離を少なくするとますます筋力が萎えると思って、しばらく前まで頑張って歩かせていた。しかし、クオリティー・オブ・ライフのことを考えるようになってから、それはやめた。
今は、少しでも痛みが少なく過ごせるようすることを優先している。最近は、朝10分、午後15分、夜10分ほどの散歩だけ。
内臓は幸い健康で問題なし。悪いのは足だけ。朝は一番元気で、喜んでしっぽを振って甘えてくる。
ラブラドール特有の旺盛な食欲は衰えてきたものの、足を引きずってまでキッチンやダイニングテーブルの下に落ちた食べ物を探しにやってくる。
まだ、安楽死を選ぶ段階ではないと思っている。もうよたよたのお婆さんだけど、まだ「幸せ」のほうが勝っていると思うからだ。
それでも、いつか決断をしなければいけない日が来るかもしれない。安楽死の方法については、調べたが辛すぎて今回は書けなかった。
ただ、痛みはないし、すぐに終わるそうだ。また、イギリスでは獣医が家に出向いて処置してくれることもあると分かった。
今回調べていて思ったのは、安楽死にしろ、自然死にしろ、どちらにしろ飼い主は途方もなく悲しい体験を通らなければならない点では同じだということ。
あのあたたかく柔らかい毛の生えた家族が息を引き取ることを考えただけでも、胸が張り裂ける思いだ。安楽死は、いずれ確実に来るお別れを、苦しんでいるペットにとってより楽なものにするのだろう。
人間だったら寝たきりになっても、家族と話したり、本を読んだりテレビを見たりできる。しかし、犬は違う。
犬の、犬らしい生活。犬としての幸せ。
私は、やはり判断の基準はここにあるように思う。物を言えない犬だからこそ、注意深く様子をみてあげたい。
みかんに残されている日々はもうわずかだ。最期まで幸せな一生を送れるように、一日一日を大事にしてあげたい。

ヨーグルトの容器を舐めていたら、長い鼻が抜けなくなってしまったみかん。
いかがでしたか?
これは、本当に難しい判断だと思います。命の問題だからです。飼い主が、自分のペットのことを一番ある意味分かっているので、それぞれが冷静に判断するしかありません。
今でも私は自然な安らかな死を望んではいますが、最期は誰にも分かりません。いざと言う時のことを今からしっかり考えて備えておこうと思っています。
また看取り方も大事ですが、生きている間一日一日どう愛犬と接するかはもっと大事だ、と私は今回思いました。
うちも13歳の老犬がいる身としては、よく考えさせられる課題だよ。実家にいた犬は、16歳で息を引き取ったけれど、最後の方は、自分で思うように動けなかったり、フンも垂れ流しだったりして、イギリスやアメリカではきっと安楽死にもっと前に連れて行っていたんだろうなという姿だったよ。人間は安楽死できる場所って少ないよね。確か、末期癌の患者さんが、自ら安楽死を選択するために、安楽死を認めるアメリカの州に引っ越したというニュースを数年前にやっていた気がする。今はまだ犬の安楽死に納得できないでいる。ここ数年で、うちの犬のためだって思えるようになるのかな。
Ella the Siba Monsterさま
コメント、ありがとうございます!
実家のワンちゃんは16歳ということで、大往生でしたね。日本ではやっぱり「最後まで介護」という意識が高いでしょうね。
糞も垂れ流しだと、ご家族も大変だったことでしょう。
私もまだみかんに安楽死は考えられません。でも、あれだけ大好きだった散歩も辛そうな日があります。道端に座り込んじゃって、帰れないんじゃないかってヒヤッとすることも。(大型犬なので、私が抱っこして歩けないので。)
こういう日が増えたり、状態がもっと悪くなったらどうすればいいんだろう…って不安になります。
人間の安楽死は色々とハードルが高いと思う反面、犬は自分の意思を表明出来ないから飼い主の判断にかかっていて、家族の責任は重いですね。
13歳なんですね。
うちは、14歳になってからみるみる衰えていきました。楽しく運動して「元気な時間」をぜひ増やしてあげてください。
霧立灯
先週近所の犬が安楽死しました。ヨークシャテリア14歳でした。飼い主の人の息子の奥さんがイタリア人なのですが、イタリアでは安楽死しないと言っていました。それから、どれだけの文化が安楽死賛成で、どれだけの文化が安楽死推奨しないのかなって考え始めました。何が正しいとか正しくないとかないとは思いますが、アメリカにいるからと言って、アメリカのやり方に従わなくてもいいのかなって思ったりも。
エラちゃん尻尾振り中さま
いつもコメントありがとうございます!
イタリアは安楽死しないんですね。カトリック国だからでしょうかね?
「欧米」といっても本当に一色ではありませんね。
私も別にイギリスにいるからイギリスのやり方に従わなくてもいいと思います。
ただ、四六時中痛がっているのにただ生存させておく、というのは可哀そう、と思ってしまいます。
みかんは来週15歳になります。
朝は一番元気で嬉しそうなのですが、その後は夜までほぼ寝ているようになりました。
いつまでもつかな…といつも思っていますが、美味しいものあげて、少しでも楽に過ごせればなと思っています。
夏まではきっと無理そうなので。
みかんのいない空間を考えると、心に一瞬冷たい風が吹き抜けます。
後悔のない飼い方をしたいですね。
霧立灯