「牛乳を飲むと背が高くなる」。
誰もが子ども時代にそう言われたのではないだろうか?わたくし霧立灯も子ども時代にたくさん牛乳を飲んだものだ。
給食では必ず牛乳が出たし、「牛乳は成長に必要不可欠なもの」ということをはなから信じていた。でも最近の我が家はめっきり牛乳の消費量が減った。プラントベースのミルク(アーモンドミルクなど)に切り替えたからだ。
しかし、我が家には成長期真っただ中の子どももいる。9歳になった息子・ユウだ。彼もまた、ほとんど牛乳を飲んでいない。
霧立一家はベジタリアンやヴィーガンに近い食生活にシフトしているので、親として(本当に牛乳なしで大丈夫だろうか…)という心配はぬぐえない。そこで今日は、徹底的にニュートラルな視線で牛乳と身長の関係について調べてみた。
牛乳を飲むと背が高くなるのは本当か?
いきなり結論
色々リサーチして、日本語と英語の記事をたくさん読んだ。「牛乳を飲むと本当に背が高くなるのか?」という疑問に対して私が結論づけたのは…
―No.―
もっと、厳密に言うなら「牛乳は成長を促進する栄養食品の一部にすぎず、牛乳を飲んだからといって背が高くなるわけではない」ということ。
え?分かるような、よく分からないような…?
では、詳しく説明していこう。
牛乳は急激な成長を促す
生まれたての赤ちゃんは、母乳を飲んで成長する。その成長のスピードは爆発的だ。人間の場合、初めの1年で50%も身長が伸びる(約50㎝から75㎝へ)。
それは、母乳に赤ちゃんの成長に必要な栄養素がぎっしり詰まっているからだ。しかしいつまでも母乳を飲んでいる人はいない。離乳期を過ぎれば、他の食材から栄養をとることになる。
ところが、離乳期を過ぎても人間は、牛の乳を飲み続ける。「牛の乳」…。牛を育てるんだから、これはかなりすごい栄養なわけだ。

「お母さんのお乳、僕たちだって飲みたいんだ…。」人間が牛乳を飲むことで、仔牛は母乳が満足に飲めない仕組みになっている酪農。
牛乳はタンパク質、カルシウムの量が母乳と比べてかなり多い。そこに目を付けた日本政府は、戦後学校給食に牛乳を取り入れ、牛乳の摂取を大々的に奨励してきたわけだ。
確かに日本人の平均身長は戦後70年間で8~10㎝も高くなった(統計により多少差がある)。しかし、その原因を牛乳だけに求めるのはちょっと安易である。
だいたい戦前・戦中は食べ物じたいが恒常的に不足していて、子どもはいつもお腹をすかしていた。牛乳を飲む、飲まない以前に、栄養もカロリーも不足していたのである。
今は亡き山梨医科大学名誉教授・佐藤章夫氏が「牛乳と子どもの身長」の中で、興味深いことを指摘している。
牛乳・乳製品は子どもの思春期を早めるだけで、最終的な身長を高くするわけではない。
確かに1950年代と比べて、現代の子どもの思春期は1~2年早まっている。そして、思春期が到来すると身長の伸びも終わりに近づく。
1950年の調査では、男子は15~16歳でも年間5㎝の伸びがあったのに、2005年では1.6㎝ほどしか伸びなくなっている。女子は14~15歳で年間3.9㎝あった伸び(1950年)が、2005年ではなんと0.5㎝までに減っている。
牛乳は、急激に子どもを成長させ、早い段階で成長期を終わらせてしまう原因になっているようだ。
牛乳よりも5歳までの生活がものを言う
牛乳と乳製品の摂取量を年齢別に比較したグラフがある。

「牛乳とカルシウム」より
7歳~14歳、つまり小学校~中学校の時期が突出している。学校給食の牛乳が関係しているのは明らかだが、はたしてこの時期に急激に身長が伸びているのだろうか?
それを考える上で参考になるのが次の2つ目のグラフ。これは、1950年から2005年までの日本人の平均身長推移を示したグラフである。
確かに、最終身長は伸びているのだが…よく見て欲しい。グラフは平行移動しているだけだ。小学1年生(6歳)の段階での差は1950年と2005年で8㎝ほど。
高校3年生(17歳)では、55年間に男子は9㎝、女子は5.3㎝伸びたに過ぎない。つまり、小学校に入学した時の身長差(8㎝)が、ほとんどそのまま17歳の身長差に反映されているのだ。
7歳~14歳の間にあんなにたくさん飲んだ牛乳は、一体どこに行っちゃったの?!
実際、5歳までの食生活や健康状態がその後の成長に深く影響すると言われている。「牛乳を飲むと背が伸びる」というのは、やっぱり「神話」だったんだ…。この2つのグラフを見て霧立はかなり確信するようになった。
オランダ人が背が高いのは…

女性で180㎝あっても全然珍しくないのがオランダ!
でも世界で一番平均身長が高いのはオランダ人。男性で平均184㎝、女性は171㎝もあるという。男性でいえば身長180㎝というのはオランダでは「背が低い」ということになる。
このオランダ人、実はたくさん乳製品を食べることでも有名だ。霧立の夫、マナブがオランダの学会に行ったとき、朝食のみならず3食全てに「牛乳」がついてきて驚いたという。学会の食事なのに、まるで小学校の給食のようである。
さて、オランダの牛乳消費量は世界で3番目(1位フィンランド、2位デンマーク)。うーん、こういうデータを見ると、(やっぱり牛乳や乳製品は身長と関係あるんじゃないの…?)とまたもや疑念が湧いてくる。
しかし!調べてみたらオランダ人の身長が急激に伸びたのはこの150年間のことであるという。200年前まではオランダ人はもっとも背が低い国民の一つとして知られていたという!
ホントかいな?!
でも実際、過去150年の間にオランダ人男性の平均身長は20㎝も伸びた。アメリカ人男性はたったの6㎝。
これに対して「食生活が向上したからではないか?」という意見もあるが、それだったらヨーロッパ全体でも同じだ。また、乳製品の摂取量が多いのは確かだ。しかしスイス人もオランダ人とほとんど同じくらい牛乳や乳製品を摂取するのに、男性の身長で言えば10㎝も低い。乳製品が高身長の原因ではなさそうだ。
オランダ人の急激な身長の伸びの原因は、どうやら遺伝にあるらしい。「オランダでは背の高い男性と平均身長の女性カップルほど子だくさん」というデータがあるのだ。
これは他の国には見られない傾向だという。アメリカでは、「背の低い女性と平均身長の男性カップル」が子だくさんの傾向にあるという。
背が高いカップルがより多くの子孫を残せば、高身長の遺伝子のプールがその国に増えていくのは必然的である。牛乳や乳製品というより、遺伝がオランダ人の背の高さの秘密というわけだ。
まとめ
最終的な背の高さを決める一番大きな要素は、遺伝。低身長の遺伝を受けた子どもが、どんなに頑張って牛乳を飲んでも残念ながら背は高くならない。
食生活や運動、睡眠などの要素は、どこまで効率よく遺伝で決められた身長に到達できるかに関わってくる。分かりやすく言えば、バランスの良い食生活をし、十分な睡眠と適度な運動をすることで初めて受け継いだ遺伝的要素を最大限発揮できるということだ。
私は牛乳がカルシウムやタンパク質に富んでいることは否定しない。戦後、手軽に栄養をとるには優れていたと思う。しかし、現代は飽食の時代。牛乳を飲まずとも、色々な食材から十分カルシウムもタンパク質も摂取できる。

ベジタリアンフードだって、十分タンパク質やカルシウムを摂れる。
「牛乳を飲むと背が高くなる」というのは、食糧難だった時代の話だと霧立は思う。最近では乳製品を多くとる国の人の方が骨粗鬆症になりやすいなどの話も聞くし、「牛乳=体によい」というのも再考が迫られそうだ。
ユウに牛乳を飲ませていない霧立の不安は、今回のリサーチで払拭された。やっぱり身長が高い方が色々と有利だからだ。誰だって高身長に憧れる…と思いきや、夫マナブが驚くべきことを言った。
「背って、そんなに高い方がいいのかな…?」
「ええっ?!そりゃそうでしょ。スポーツでも有利だし、出世もしやすいっていうデータもあるよ。それに見た目も背が高い方が良くない…?私は上から見下ろされるのが嫌。」
と言うと、
「そうなのかあ。僕はオランダなんか行くと、みんな背が高くて大変そうだなぁ…っていつも思ってたんだよ」
とマナブ…。
世の中の男子は「写真を撮る時は一瞬背伸びしています!」とか「髪を立てて身長が高く見えるように工夫しています!」とか「毎日鉄棒にぶら下がっています!」とか涙ぐましい努力をしているというのに、身長167㎝の我が家のマナブはオランダ人の背の高いのを同情していたとは…。
もちろん、人間一番大事なのは内面。男性なら低身長をコンプレックスにしがちだが、それを何とも思っていない我が夫は、ある意味あっぱれだ。
マナブさんと灯さんは同じくらいの背なのかな?ユウくんも似たような背丈になるんでしょうか?
そうか、乳製品は身長には関係なかったんですね。遺伝が身長に物言うのなら、147センチの私が183センチの旦那と結婚したのは正解だったんですね(笑)。娘は5フィート2くらいになるだろうと私たち夫婦の身長から計算されました。160センチくらい?私より背が高くなってくれれば、それで良いです。
私はマナブよりちょっとだけ低いですね。
でもヒール履くと高くなります。
ユウはイギリスではごくごく標準、日本だと高めなようです。
まあ、心配する必要はなさそうですね。
それにしてもエラさんは、夫君と36㎝も差があるんですね!!
お互いの違いに惹かれ合ったのかもしれませんねー!
霧立灯
そういえばいい忘れたんですけど、給食の牛乳と言うと、「ティラリー 鼻から牛乳」とトッカータとフーガの冒頭部分に合わせて歌っていた同級生の大木くんを思い出します。
ああ、ありましたね!
その後のフレーズは知らない子どもが99%かもしれません…。
牛乳は子どもが水替わりに飲んでいた時代でしたね。
灯