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クラシック業界の性差別・女性指揮者について考える

ヴァイオリン

3 10月
Last updated on 2019/02/09

女性指揮者について考える

コンテンツ

  • クラシック業界の性差別・女性指揮者について考える
    • 女性の指揮者ってどれくらいいるの?
    • 女性は指揮者に向いているのか?
    • 性差別を解消するために出来ること

クラシック業界の性差別・女性指揮者について考える

「女性の社会進出」が叫ばれて半世紀。多くの分野で女性の活躍が目立つようになった。女性の経営者、医師、宇宙飛行士、それから一国のリーダーまでも女性が担う時代になってきた。

しかし、クラシック業界は実は最も性差別が解消されていない業界の一つである。ソリストでは女性も多くいる。ヴァイオリンでは女性のソリストの方が多いくらいだ。

しかし、指揮者や作曲家となるとほとんど市場は男性に独占されている。どれだけの人が女性指揮者のコンサートに足を運んだことがあるだろうか?霧立も、実は女性の指揮者に出会ったことがない。

今日は、

  1. なぜ女性指揮者の進出が遅れているのか?
  2. 実際、指揮者として女性の資質はどうなのか?
  3. クラシック業界の性差別を解消するにはどうしたらいいのか?

ということについて書いていきたい。

女性の指揮者ってどれくらいいるの?

プロ、アマ問わず、女性のオーケストラの指揮者はとても少ない。では実際、女性の指揮者はどれくらいいるのだろうか?

ある興味深い調査を見つけた。

  • イギリス国内には61のプロのオーケストラがあり、指揮者のポストは100以上ある。しかし女性指揮者はそのうちたった4人(2017年調べ)。
  • 少なくとも5人以上の指揮者をマネージメントしているイギリスの音楽事務所では、95%が男性指揮者。
  • イギリス国内のある有名なオーケストラは「新しい指揮者たち」をホームページで紹介していたが、27人全員が男性指揮者だっだ。

女性は指揮者に向いているのか?

(オーケストラは)男性指揮者が前に立っていた方が音楽に集中できる。…指揮台の上にかわいい女性がいたら、団員は他のことを考えてしまう。…(それに)女性は家庭を持ったら、この(指揮者という)仕事で要求されていることがらに専念するのは大変だ。(拙訳)

Vasily Petrenko

現在、ロイヤル・リバプール・フィルハーモニック・オーケストラで主席をつとめるペトレンコ(Vasily Petrenko)の発言だ。彼はとても有能な若手ロシア人指揮者であり、霧立も好きな指揮者なだけに、残念な発言だった。

彼がこの発言をした時、私生活でまだ小さな二人の子どもがいたことを考えると、「母親業」の大変さを見てポロっと正直すぎる発言をしてしまったのかなあとも思う。

しかし、ペトレンコが言うように、指揮者は本当に女性には向いていない職業なのだろうか?

家庭との両立?

まず、家庭との両立を問うペトレンコの発言の裏には、「育児や家事は女性が主にやるもの」という前提がある。

主要オーケストラの指揮者は一年中、世界中を飛び回って仕事をする。一体いつ家に帰っているのだろう?と思うほど過密なスケジュールである。育児や家事にあてられる時間は非常に少ないのは、疑う余地がない。

しかし、家事・育児に時間をさけない職種は他にもたくさんある。世界中をツアーで回る一流のソリストもそうだし、大企業の社長、女優、一国の首相だって同じだろう。そんな中でも多くの女性が活躍している。

指揮者だけが家庭と両立できない仕事ではないし、女性だけが家事や育児を担う時代ではない。

女性指揮者だとオーケストラが集中できない?

霧立は女だから、男性の視点に立って女性指揮者を見ることは永遠に出来ない。しかし、逆の立場で考えることは出来る。

-イケメンの若い男性指揮者だったら、音楽に集中できないのか?

まさか!である。

確かにイケメンの若い指揮者を見るのはワクワクするかもしれないが(笑)、ひとたび音楽が始まればそんなのは関係ないと思う。

しかも、指揮者は別に露出の多い服装をしているわけでもない。かえって女性ソリストのほうが、背中や胸元が大きく開いたドレスを着ていることが多いが、オーケストラや近くにいる指揮者やコンマスが音楽に集中出来ないなどとは聞いたことがない。

ペトレンコ、ちょっと意識しすぎじゃないか?音楽に集中すればセクシュアリティなどは眼中にならないはずだ。プロフェッショナルなら、なおさらだ。

「ペトレンコ、もっと音楽に没頭しろと言ってマス!!」

                  By シュトレーゼマン

大きなジェスチャー

指揮者はプレイヤーと違って、一音も音を出さないで音楽を表現しなければならない。だから全身で音楽を表現しなければならない。また、合唱団を含めた場合100人を超えるような集団に意思伝達するには、かなりの大きなジェスチャーが必要になる。

これは、女性指揮者にとって大きなチャレンジだとMarian Alsop(女性指揮者マリアン・オールソップ)は言っている。

社会は女性のジェスチャーを(男性の場合とは)違ったように受け止めます。もし女性が力強いオーラを溢れさせる表現をしたら嫌悪されますが、それが男性だったら好意的に受け止められるのです。(拙訳)

Marian Alsop

だからこそ彼女は、女性の指揮者の卵に「大きなジェスチャーを恥ずかしがってはいけない。力強さを人目をはばかることなく表現出来るようになりなさい」とアドバイスしている。

音楽に集中し性別の枠を超えることは、オーケストラや聴衆だけでなく、女性指揮者本人にとっての課題でもあるようだ。

実力としてはどうなのか?

では、そもそも女性は能力的に指揮者に向いているのか?ということについて考えてみたい。

一昔前、指揮者にはカリスマ性が重要だっだ。フルトヴェングラー、トスカニーニ、ワルター、近年ではカラヤン、バーンスタイン、小澤征爾などが思い浮かぶ。

とにかくみんな個性が強い変わり者。トスカニーニはひどい癇癪持ちで、うまく弾けないプレイヤーには” You are OUT!!”と言って即刻クビにしたり、怒り心頭になってコンマスの指を指揮棒で突き刺して裁判沙汰になったこともあるとか。(オソロシイ…。)

しかし、近年指揮者に求められているのはカリスマ性ではなく、対話力、マネージメント力だと言われている。

「オレについてこい!」という圧倒的な存在感ではなく、オーケストラのメンバーと対話をし、信頼関係の上に共に音楽を作り上げる姿勢が大切なのだ。

また、年間を通じたプログラムの作成を事務局やオケのメンバーと話し合いながら決めることも指揮者の仕事。曲目を選ぶ際に、客入りなどにも配慮しなければいけない時代になったのだ。

そういった意味で、コミュニケーション能力、マネージメント能力、きめ細やかさなど多様な資質が求められる。

決して女性にとって不利ではなく、むしろ女性にとても向いているともいえるかもしれない。

また、現段階では絶対的に女性の指揮者が少ないため、男性女性、どちらが指揮者に向いているか判断するのは難しい。

ウェールズBBCナショナル・オーケストラの主席指揮者となった女性指揮者Xian Zhangは、こう言っている。

若い女性でプロの指揮者として成功している例は少ないです。もっと女性指揮者の数が増えた時に初めて、私たちは女性が指揮者としてふさわしいのか判断できるでしょう。(拙訳)

Xian Zhang

性差別を解消するために出来ること

女性指揮者の育成

オールソップ(Marian Alsop)は、自分の資金で若い女性指揮者の育成のためのワークショップを開いている。

アリス・ファーハム(Alice Farham)も同様だ。彼女は世界でトップ10に入る女性指揮者だと言われているが、彼女もまた定期的に10代の少女たちにワークショップを開き、オーケストラを指揮する機会を設けている。

少女たちはロールモデル(お手本)が必要だ。世界で活躍している女性指揮者がこのような形で直接若い人たちを指導し、励ますのは本当に意味があることだ。

オールソップは少女たちに向かって言っている。

「自分が女だから、という理由で指揮者になることを絶対に諦めないでほしい。」

音楽業界の対応

音楽事務所は、実力のある女性指揮者と積極的に契約を結んでいくことが必要。

一般聴衆に出来ること

きっと多くのクラシックファンは、「無意識の偏見」(unconscious bias)によって女性指揮者を過少評価してきている。霧立自身がそうだったように。

しかし、まずは自分の目と耳で体験してみることだ。手始めに上のオールソップの音楽を聴いてみてほしい。「無意識の偏見」もきっと吹き飛ぶことだろう。

霧立も今回この記事を書くにあたって、オールソップ以外にも色々な女性指揮者の演奏をYouTubeで聴いた。好き嫌いは正直あった。でも、それは指揮者の性別に由来するものなのか、と聞かれたら、おそらく性別とは別の問題だろうと思った。男性指揮者の音楽でも好き嫌いがあるのとまったく同じだ。

そして、全ての女性指揮者が輝いていることに感銘を受けた。偏見や常識にとらわれずに、自分の夢に生きている彼女たちは、それだけで素晴らしいと思った。

保守的なクラシック業界の性差別がなくなり、「女性指揮者」とわざわざ言わなくてもいい日が来るといいなと思う。

 

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