EUのサマータイムを考える
サマータイム EU市民8割超が廃止望む
8月30日毎日新聞
この新聞記事を見て、正直驚いた。緯度が高いヨーロッパでは、あるべくしてサマータイム制度(DST=Daylight Saving Time )が長年採用されてきたと思っていたからだ。
年間の日照時間差が大きいスコットランドに住んでいればなおのこと、季節の「時間調整」は必要不可欠だと思っている。
今回は、まずはEUのサマータイム論争を具体的にみていきたい。日本のサマータイム導入については、時を改めて書いていきたい。
スコットランドの日照時間
緯度の高いスコットランドでは、冬時間のままでいたら夏の日の出は冬よりなんと6時間も早い!そして日没は、夏は冬より5時間も遅い。
現在はサマータイムがあるから、日照時間の差は夏と冬で約10時間。これは夏至と冬至のピーク時の差とはいえ、こんなに極端に日照時間が違う国では、サマータイムはなくてはならない制度のように思う。
ちなみに日本を調べてみると(真ん中あたりの山梨県のデータをとってみた)、夏は冬より2時間早く日が昇り、日の入りは2時間半遅かった。年間の日照時間差の最大は4.5時間。スコットランドの半分以下だ。
サマータイムが始まった理由
一番先にサマータイム(DST)を導入したのはドイツ。第一次世界大戦の最中(1916年)、電気の消費量を抑えるために始まった。いかにも効率性を追求するドイツ人らしい発想だ。
イギリスはその翌月に、サマータイム制度を導入。石炭の消費量を抑えることが狙いだった。
廃止したいのは冬時間
では、なぜサマータイム廃止を求める声が高まっているのか?
まず初めに明確にしておきたいのは、サマータイム廃止を求める人たちは、サマータイムをやめて現在の標準時間であるウインタータイムで年間過ごすということを言っているわけではないということだ。(なぜか、日本のメディアはこのことに触れていない。)
彼らが求めていることは、むしろサマータイムを年間の標準時間にするということらしい。実質的には「ウインタータイム廃止」というわけだ。ちょっと紛らわしい。
霧立はただでさえ、冬の朝、まだ真っ暗うちに起きなければならないのが苦痛なのに、サマータイムが一年中続いたらたまったものではない。スコットランドの冬は、朝9時になってようやく明るくなってくる。それが10時まで暗いままになるなんて、冗談じゃない。
しかし、なぜEU市民にとってウィンタータイムは不人気なのか?霧立は、ウィンタータイムはあったほうがいいと思うので、廃止論を紹介しつつ反駁していこうと思う。
Are you ready?
ウィンタータイムを廃止したい理由
①「欲しいのは冬の午後の日照時間」
現代人は9時ー5時で働いて、アフターファイブを楽しみたい人が多い。日本の場合、アフターファイブは仕事関係の飲み会が大半ではないだろうか?(と言う前に、5時に上がれる人はほとんどいないだろう。)
イギリス人は、本当に5時、遅くても5時半には職場を出る。職住接近なので、6時にはみんな家に着くので、家族で夕食を囲む。
アフターファイブを楽しむのは、仕事帰りの人たちだけではないのが日本と違うところだ。霧立も、友人たちと夕食後にカフェに行ったり、コンサートに出かけたりすることがたまにある。あと、オーケストラの練習も平日の夕食後の時間帯だ。
だから、多くの人 にとって夜は少しでも明るいほうがいい。昔は農家が多かった。日の出が遅い冬は、どうしたって仕事開始時間は遅くなる。しかし現代では働き方と共にライフスタイルも変わった。現代人は、冬の朝の暗さを我慢しても午後の日照時間が長いほうがいいのだ。
<異議あり!>
霧立にとっては、とにかくこれ以上真っ暗な中朝起きたくない!という非常に個人的な理由で却下!夜は暗くたって大人は楽しめると言いたい。映画館やコンサートホールやクラブはどうせ暗い。だいたいウインタータイムを廃止しても、日没は3時半が4時半になるだけ。アフターファイブはどうせもう暗い。
それよりウィンタータイムがなくなったら冬の日の出が朝10時。子どもたちは漆黒の闇の中登校し、2時間目までは真っ暗。午前中の外遊びも薄暗い中…。子どもは大人と違って暗いと遊べないデショ!
②「健康に悪影響」
3月末の日曜日に時計を一時間早めてサマータイムにすることで、健康被害が認められるとの報告がある。
睡眠障害、それによる日中の集中力の低下、高血圧症の増加など。また、サマータイムに切り替えた直後は毎年交通事故が急増するという。
<異議あり!>
たった1時間朝起きる時間が早くなるからといって、ちょっと大げさなんじゃない?と思ってしまう。イギリス人は休暇になるとフランスやイタリアに旅行に行く人が多いが、イギリスとの時差は両国とも1時間。2週間の間(平均的なイギリス人の休暇期間)に2回もタイムチェンジをしたら、さぞかしすごい大病になってしまいそうだが、そんなことは聞いたことがない。
③「子どもの外遊び時間が減少」
ウインタータイムになると午後の日照時間が減るので、子どもの外遊びの時間が5%減ってしまうという報告がある。確かに冬は午後3時を過ぎれば、薄暗くなる。サマータイムを維持すれば、子どもが外遊び出来る時間が増えるというわけだ。
<異議あり!>
外遊び時間が5%減少するとは言っても、時間にすれば35分(サマータイム時)が33分になるだけ。この2分の差は大きいと専門家は言うが、霧立はちょっと懐疑的。それより、スクリーンタイム(TVやスマホ、タブレット)を減らしたほうがずっと健康的になる思ってしまう。外遊びの時間が少ないのは、日照時間とは別のところにもっと問題がある。
④「交通事故を減らせる」
ウインタータイムをやめれば午後の日照時間が増え、結果的に交通事故を減少出来る、というのがその主張だ。
<異議あり!>
もしウィンタータイムがなくなれば、スコットランドの冬の日の出は10時。子どもが学校に向かう8時半は日の出からは程遠い、漆黒の闇。その方がよっぽど交通事故の危険性が増すと思う。
おわりに
一口にEUといっても、地理的に広大なので日照時間の差は大きい。霧立が住んでいるスコットランドはEUの中でもかなり北なので、南欧に比べてウィンタータイムの恩恵は大きい。
実際、調べてみたらスコットランドでは現行制度支持派が過半数。やっぱり、という感じ。一方でEUで最北に位置するフィンランドは、現行制度反対派が多数。これはちょっと解せない。もう少しリサーチが必要だ。
しかしまあ、イギリスはEUを出るわけだし、たとえEUがサマータイムをやめたからといって、そもそもそれに倣う必要はないのだ。(かえってサマータイムの間は時差がなくなったりして!)
日本のサマータイム制度導入の是非については、また機会を改めて書きたいと思う。