我が家のユウは4歳という早い段階から、割とトイレが近かった。しかし、あることが原因で15分に1回トイレに行かないと気が済まなくなってしまった。
ストレスが原因の心因性頻尿だった。そんなことが1年以上続き、本人も家族も疲れ果ててしまったが、ある方法で乗り越えることが出来た。
今日は、トイレが近くて悩んでいる親子に向けて書いていきたい。
「心因性頻尿」とは?
「トイレに行きたい!」
小さい子どものいる親ならば、外出先で突然こう言われて慌てることも多いだろう。しかも、そういう時に限ってなかなかトイレが見つからなくて親子で冷や汗…なんていうことも。たいがいは、出かける前にちゃんとトイレを済ませなかったことや、水分のとり過ぎが原因だ。
しかし、「心因性頻尿」」はそれとはまったく別の症状。
心因性頻尿とは…
本来は膀胱に尿が一定以上貯まると、強い尿意が生じます。しかし、ストレスや緊張などで脳が過敏な状態にあると、弱い尿意を感じてトイレに行きたくなります。これを心因性頻尿といいます。心因性頻尿は起きている間の頻尿で、通常、夜間の睡眠中にはおきません。
日本医師会「日医ニュース」
心因性頻尿の原因は?
多くの場合、「トイレに行かれないシチュエーションで、猛烈にトイレに行きたくなってしまった経験」が引き金になっているという。例えば、大事な会議中や、電車の中などである。
実はうちのユウも6歳の時に、飛行機に乗る寸前に「トイレに行きたい」と言い出し、シートベルト着用サインが消えるまで(これが結構長い!)トイレに行かれなかったことが引き金となって、その後この心因性頻尿に悩むことになってしまった。
尿意というものは、かなり心理的なもの。「今は行かれない」と思えば思うほど、トイレに行きたくなってしまうのである。
特に小さな子どもは経験が少ないため、理性で尿意を抑え込めないことが多い。ユウの場合も「さっき行ったばかりなんだから大丈夫でしょう?ちょっと我慢しなさい」と親が言っても、本人は飛行機の中でパニック寸前だった。
この体験がトラウマとなり、後に「呪い」となって霧立家を長きに渡って疲弊させることになるとはこの時、露だに思わなかった。
まず、「ローマ旅行」は「トイレ旅行」になってしまった。どこに行っても15分おきに「トイレ」。観光地で行列に並んでいてもトイレ。古代遺跡見学中でもトイレ。たった30分のバスもトイレのため家族全員で途中下車。(「切符どうなるのよ~!!」の霧立。)
とにかく「ローマの思い出は?」と聞かれれば、霧立家は全員「トイレ!」と即答するほど、我々はローマで1週間トイレばかり毎日探していた。まったく、「絶対外せない!ローマで行きたいトイレ100選!」というブログ記事でも書けそうな勢いだ。
心因性頻尿の対処
イギリスに帰ってきてからは、ネットで心因性頻尿の対処について調べまくった。多く目にしたのは、
おおらかに対処しましょう。子どもが「トイレに行きたい」と行った時は、我慢させずに連れていきましょう。
とか、
なるべく本人に「頻尿」を気付かせないように、自然に振舞いましょう。そのうちに自然に収まります。
というものだった。
家にこもりがちになり、心理的に家族中が病んできていた。本人が一番辛かったと思う。でも、こうも長く続くと、毎回「おおらかに」なんて接していられなくなることも多々あった。「トイレ」のせいで毎日疲れ果てていた。
ついに病院へ
「本人に頻尿を意識させないように」というアドバイスだったので、病院に連れていくことはためらっていた。
でも、「本人に意識させないように」なんて所詮無理な話だったのだ。15分おきにトイレに行かなければならない状態は、ユウにとって苦痛以外のなにものでもない。それを「意識しない」なんて、禅僧でもない限りムリな話だ。
そこで思い立って病院に連れて行った。念のため膀胱炎の検査もしたが、陰性だったため、GP(かかりつけの医者)に専門のカウンセラーに紹介状を書いてもらうことになった。
その時GPに言われたことは、「朝起きたときにカップに尿を採取して、本来どれくらいの尿を膀胱が貯えられるかを本人に見せてみてください」ということだった。頭で理解させる、という方法だった。
夜中も1、2回はトイレに起きていたとはいえ、ユウの膀胱は少なくても250ccは貯められることが分かった。一方、15分おきにトイレに行っても出るのはスズメの涙程の量。
その差が歴然としていることはユウにも分かった。しかし、頭では分かったものの頻尿はなかなか収まらなかった。
劇的な変化
心因性頻尿で苦しみ始めてから10か月が経っていた。ある時、またネットで検索していたら、これまで見てきたアドバイスとは正反対のことが書いてあるのを見つけた。
「トイレに行きたい」と言ったら、まずは1分我慢させましょう。我慢出来たら褒めて、次は3分、5分、10分…というように我慢させる時間を徐々に増やしていきましょう。そのうちに子どもは30分我慢できるようになり、いつしか頻尿は治ります。
(これは、いけるかも…。)
直感的に思った。現実的な指導だと思った。小さな自信の積み重ね。これが一番ユウにあっているような気がした。
早速、その日から始めてみた。まずは1分。これは簡単。低いハードルで始めることは、とても重要だ。
これまでだって、外出先で「えー!トイレ?ちょっと待って今探すから!」とテンパっていた時ですら、5分はかかっていたはずだ。でも、その5分は、「トイレがなかったから我慢せざるを得なかった不可抗力の5分間」。1分といえども「トイレのある家で、自分の意志で我慢した1分間」とは重みがまったく違うのである。目から鱗だった。
焦りは禁物。徐々に徐々に、我慢する時間を増やしていった。パニックになることは一度もなかった。我慢できる時間が長くなるにつれ、本人の自信もつき家族全体の緊張が緩んできた。
「トイレに行きたい」と言い出してからの待ち時間が15分を超えたころ、本人は「じゃ、まってるあいだに、本をよんでよう」とか「テレビをみてよう」と言い出した。
すると、15分経っても気づかないで本やテレビに夢中になっている。わざわざ知らせることもないと思ってそっとしておくと、一気に20分、30分待てるようになっていた。本人は後で気が付き、自分で驚いていた。
待てる時間が40分になったとき、もうこの指導は必要ないと思った。トイレの間隔も3~4時間になっていた。15分と比べると、目覚ましい進歩だった。学校でも、1日のうち、休み時間に2回行くだけになった。
こうしてカウンセラーとの予約が取れたころには、心因性頻尿はすっかり治っていた。結局予約はキャンセルした。勝利だった。
おわりに
あれから半年以上経った。その間、2回ほど「さっき行ったばかりなのに?」というタイミングで車の中でトイレに行きたいと言ったことがあった。しかし本人は自分で「わかってるよ。だいじょうぶだってこと。ぼくはがまんできる。」と言って乗り切った。
本当にすごいと思う。たった7歳で、不安を自分でコントロールできるようになっていた。出かける前は、トイレに行く習慣もついたので、外出先で「またトイレ?」となることはここ数か月間皆無だ。
心因性頻尿になるのは、おそらく神経質で真面目な子どもが多いだろう。ユウもそうだと思う。トイレだけでなく、生活のいろいろな場面でストレスを感じさせないようにすることがこれからも大切だろうと思っている。
というのは、霧立自身が生真面目だからだ。「そんな風に見えない!」と多くの人は言うかもしれないが、そうなのだ。親が神経質だと子どもにもそれは伝わる。心因性頻尿の件も半分以上、自分の対応が原因していたと思っている。
だからこそ、もっとおおらかにならないと、と思わされている。「子どもは親の鏡」であり、「子育ては自分育て」と言うが、まさにその通り。ユウの心因性頻尿は、もっとのんびり、大きく構えていこうということを、霧立に教えてくれた。
いかがでしたか?
心因性頻尿は、本当に悩みの深い問題だと思います。一過性ならともかく、慢性になってくると本人も親も疲れ果ててしまうことと思います。だからこそ、その子ども(人)にあった方法で対処していくことが大事だと思います。
この記事が心因性頻尿で悩んでいるか方々にとって、少しでもお役に立てればと心から願っています。
嬉しいことに、読者の方からも「この方法で頻尿が治った!」とのご報告を頂きました。その方は、一定の時間トイレを我慢できたらお菓子をあげる、というゲームを取り入れたそう。お子さんは、ゲーム感覚で楽しく頻尿を克服できたとのことでした。
とてもいいアイディアだと思うので、ぜひ取り入れてみて下さい!
またユウのように、頻尿を気にするあまり水を飲みたがらなくなってしまうケースもあるのではないでしょうか?しかし、それはそれで問題です。
水を飲むことの大切さ、上手に水分補給することについても書いたので、ぜひご一読を。
また、ユウがそもそもトイレに神経質になってしまった原因についても考えました。「そもそもの原因」を突き止めることも、今後の子育てにおいて重要だなあと思わされましたので、載せておきます。