「イギリス文化」と聞くと、何を思い浮かべるだろうか?
洗練された紳士淑女、アフタヌーンティー、古いお城…どこか気取った雰囲気を思い浮かべる人も多いだろう。そのイメージはかなり正しい。
しかし、一方で知られざる珍妙な文化もある。今日は、わたくし霧立灯がイギリスで暮らしていて出会った、日本人には理解しがたい珍妙なイギリス文化について書いてみたい。
知られざる珍妙なイギリス文化
ティッシュを何回も使いまわす
日本人は、ティッシュは使い捨て。鼻をかんだら、ゴミ箱にポイ。
しかし、イギリス人は同じティッシュを何度も使いまわす。これは、イギリス人に限ったことではなく、ヨーロッパでは広く観察される現象である。
使ったティッシュを次の使用に備えてポケットやバッグに入れる、という程度なら驚くに値しない。

欧米人は、人目をはばかることなく、すごい音で鼻をかむ。
しかしある時、友人が鼻をかんだティッシュをセーターの袖口にシュっとしまい込んだのだ。
エ…!?
手品でも始まるんですか?!
と一瞬思った。何事もなかったかのように話し続ける友人をさえぎって、霧立は思わず聞いてしまった。
「え…、ティッシュ、そこにしまうの…?」
友人は笑って、
「ははは、面白い?私はいつも袖口にしまっておくのね。取り出しやすいでしょ?」
と言う。その後、袖口にティッシュをしまい込むのはごくごく普通のことだと分かった。長袖を着ていない夏はどうするのか?と聞いたら、
「ノースリーブの時なんかは、ブラの隙間に挟んでおくこともあるわよ~あははは~!」
と言われて、目を白黒させてしまった。
ブラの隙間に鼻をかんだティッシュを押し込み、次にまたそこから汚いティッシュを取り出して鼻をかむ…。
気高いイギリス人の裏の顔を見てしまったような気持ちになった霧立であった。
ちなみに、なぜ何回もティッシュを使い回せるかというと、イギリスのティッシュはとても丈夫なのである。3枚重ねが標準。日本で街を歩いているともらえるポケットティッシュとは厚さが全然違う。
また、イギリスではその昔、ハンカチで鼻をかんでいた。その度にハンカチを捨てるわけにはいかないから、そのままポケットにしまい込み、何度も使ったのだ。
今でも、年配の人でハンカチで鼻をかんでいる人は結構いる。エコといえば、最高にエコである。
洗濯機のナゾ
キッチンに鎮座している洗濯機
イギリスの一般家庭では、洗濯機はキッチンに鎮座している。だいたい、シンクの隣りに収まっていることが多い。
霧立は初め、どうもこれが気持ち悪くて仕方がなかった。
だって、食事の支度をしている時、真下で汚いパンツやら何やらがグルグル回っているですよ!!
慣れとは恐ろしいもので今ではすっかり受け入れてしまっているが…。
では、なぜイギリスの家庭ではキッチンシンクの横に洗濯機があるのか?
それは、イギリスの家が狭いからである。アメリカの家は広いので、ユーティリティー・ルーム(洗濯機や掃除道具が置いてある専用の小部屋)がある。
しかし、イギリスでユーティリティー・ルームがあるのは、ちょっとした贅沢なのだ。
同じ狭いでも、日本はバスルーム(脱衣所)に洗濯機を置くことが多い。しかし、イギリスでは法律でバスルームにコンセントを取り付けられないことになっているため、それが出来ないのだ。
洗濯に4時間かかる
日本では、洗濯機の標準コースは平均して40~50分だそうだ。ところが!イギリスの洗濯機の標準コースだと4時間かかるものも珍しくない。
4時間ですよ!
乾燥してくれるわけでもなく、単に洗濯機能だけだ。「今日はお天気がいいから洗濯しよう」と思って洗濯しても、干すときには昼過ぎになってしまう。
霧立は、古い洗濯機が壊れてから最新式の洗濯機を買った。売りは「標準コースがナント2時間30分!短い!」というものだった。
もう、ツイテイケナイネ…。
冬でも開けっ放しのバスルームの窓
イギリスに引っ越してきて1年目の冬。霧立家の上の住人が、極寒の中でもバスルームの小窓を常に開けて、換気をしていることに気がついた。
私は寒いのが大嫌い。だから冬は窓はきっちり閉め切っていた。そうしたら…。
バスルームの壁がカビだらけになってしまったのだ。バスルームだけでなく、日当たりの悪いベッドルームの壁も!
日本ではそんなことは起こらなかった。気候のせいもあるだろうが、イギリスの古い家は、どうやら湿気がたまりやすいようだ。

「ボクもバスタブで洗ってもらうからね、換気してね。湯気でモクモクしちゃうと息苦しいよ~」
イギリス人が真冬でもバスルームの窓を開けっぱなしにしているのは、湿気対策だったのである。それからというもの、霧立家も真冬でさえ数時間は家中の窓を開けて換気をするようになった。
安心して手を洗えないイギリスの蛇口
「イギリス人って何考えてるの?!」と叫ばずにはいられないのが、洗面所にある蛇口。
“Hot”と”Cold”に分かれており、蛇口も二つ。一年を通して寒いスコットランドでは、夏でも手はお湯で洗いたい。
しかし、”Hot”の蛇口をひねると、ヤケドしかねないほどの熱湯が出てくる。”Cold”の方はもちろん凍えそうに冷たい水しか出てこない。
どーやって使うのよっ!!
まったく、安心して手が洗えたものではない。イギリス人は一体どうやって、手を洗っているのか?
イギリス人が教えてくれている動画を発見したので、ぜひ見てもらいたい。
適温で顔を洗いたいならば、シンクに栓をして、両方の蛇口から熱湯と水を出し、シンクに水を貯めなければならないのである!!
恐ろしく面倒!マナブがイギリス人の友人に「なんでイギリス人はあんな非効率な蛇口を今でも使っているの?」と問い詰めたことがある。
そうしたら、驚くべき答えが。
「ナイス・ルッキングだから」
そんなことって、ありますか?!蛇口が二つだと、素敵なんですかねぇ?全然分かりませんわっ!と思っていた。
しかし。イギリスで暮らしているうちに、日本でよく見かけた現代的でスタイリッシュな蛇口は、味気ないと思っている自分に気付いて驚いた。異国で暮らしていると、美的感覚も変わるものだ。

こういう蛇口は、イギリスでは「エレガントでない」と思われる。
そもそも、なぜイギリスでは蛇口が2つあるのか?
イギリスでは昔、熱いお湯は屋根裏のタンクに貯蔵されていた。新鮮な冷水は飲み水用で、お湯は衛生上の観点から冷水と混ぜてはいけないと決められていた。
現在では、お湯を屋根裏のタンクに貯蔵することもなくなり、お湯の蛇口からも新鮮な水が出る。だから、ひねる部分は”Hot”と”Cold”に分かれていても、お湯と冷水が混ざる仕組みになっているため、蛇口は1つのものも多い。
しかし、ハンドル部分はいまだに分かれたままの物が多い。適温を出すには、”Hot”と”Cold”の両方のハンドルを回さないといけない。

イギリス人は古いものが大好き。斬新なデザインはあまり好まれない。
まとめ
イギリスと日本はどちらも島国。でも決定的に違うのは、日本が外国のいいものを取り入れるのに長けているのに対して、イギリスは外国に無関心だということ。
どんなに時代が移り変わっても、「自分たちはこれでいい」と思っている様子が暮らしのあちこちに見えてくる。
今回のBrexitも結局、根っこにはそういうメンタリティーがあるのではないか?と霧立は個人的に感じている。
それにしても、気取ったイギリス人の素顔、けっこうお茶目ではないだろうか?