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痛ましくない天才児の育て方:Alam Deutscherを参考に。

ヴァイオリン· 子育て&教育

12 9月
Last updated on 2018/11/26

幸せな子ども時代

コンテンツ

  • 音楽教育と幸せな子ども時代は両立するのか?
    • 「英才教育」という名の抑圧
    • 痛ましくない「天才児」
    • カギは自由な時間
    • おわりに

音楽教育と幸せな子ども時代は両立するのか?

「英才教育」という名の抑圧

先日、ユウのピアノのレッスンに行った時のことだ。カーチャ(先生)が、

「〇〇ちゃん(6歳くらいの中国人の女の子)はピアノとヴァイオリン両方やっているから、少なくても毎日1時間、多い時で2時間練習するんですって!ビックリしたわ。『それで遊ぶ時間あるの?』って聞いたらやっぱり『ない』って言ってたわ。」

私もビックリしつつ、心が痛んだ。

「遊ぶことは一番大事だと思います。私は自分の子どもにそんなにやらせたいとは思いませんね。子どもにとっては遊ぶことは本当に大切だから。」

と言ったら、

「I agree.」

とカーチャも言っていた。

その女の子は、発表会ではいつも一つのミスもなく、「完璧」に弾く子だった。でも、弾いている姿を見ていてもなんだか楽しそうに感じない。「完璧」なんだけど、そこには湧き上がる「音楽」がない…。

他の子どもたちは、多少間違えても(ああ、この子、本当にこの曲が好きなんだなぁ。)と思わせるものがある。だから、カーチャの話を聞いて、余計にその中国人の女の子が気の毒に思えた。

先日、霧立の姉のことも記事に書いたから、姉の抑圧された子ども時代のことも思い出していた。ピアノに明け暮れていた子ども時代。それから、超一流ではヴァイオリニストの五嶋みどりさんのことも。彼女も、幼少の頃から母親にそうとうスパルタで鍛え上げられた。だから彼女の今がある、というのは確かなことだ。

しかし、いったい音楽教育のこのゆがみは何だろう、と思わずにはいられない。音楽は、もっとリラックスして楽しんで学べないのだろうか?

痛ましくない「天才児」

Alma Deutcher

Alma Deutcher(アルマ・ドイチャー)は、まだあどけなさが残るイギリス人の音楽家・作曲家。11歳にしてオペラ「シンデレラ」を作曲した天才児である。またピアニスト、プロのヴァイオリニストでもある。

彼女のことは以前から少し知っていたが、今回色々調べてみて、彼女が音楽を通して人生を本当に謳歌していることを知り、感動した。また、全くスパルタからはかけ離れた教育方針の家庭でのびのび育っていることを知り、それもホッとした。

今回はAlam Deutscherを通して、いかに幸福な子ども時代を過ごしつつ才能を開花させられるのかを考えてみたい。

インスピレーションの泉はリラックスタイム

ガリガリ練習だけさせられている音楽家に、決定的に欠けているものがある。それはインスピレーションだ。

しかし、アルマは6歳でソナタを作曲し、11歳でオペラのスコア(総譜)を書き上げるほどの溢れるインスピレーションを持っている。一体、どこからそんなインスピーレーションを得るのだろう?

「作曲しよう」って思って机に向かっていてもインスピレーションは湧いてこないわ。それについて全く考えてないときーリラックスしている時、お庭で(縄跳びを振り回しながら)スキップしている時、寝ようとした時、起きた時、それから寝ている夢の中でーとても美しインスピレーションが湧いてくるの。

Alam Deutscher

縄跳びと自然

また「縄跳び」に関しては、非常に興味深い発言をしている。

この映像じたい、彼女のチャーミングな様子が溢れていて霧立は一発で彼女のことが大好きになってしまったのだが、要するにこうだ。

司会者「縄跳びでインスピレーションを得られるということですが、どういうことでしょうか?それを握るんですか?それとも縄跳びで飛ぶとインスピレーションを得られるのでしょうか?」

アルマ「いえいえ、ただ振り回すんですよ。そうするとだいたいいつもメロディーが頭に浮かぶんです。」

司会者「縄跳びをただ振り回すだけで、メロディーが浮かぶの?」

アルマ「はい。たいていそうです」

司会者「OK。私もそういう縄跳び買うわ。」

(会場爆笑)

また他のところでも縄跳びについてこう語っている。

私は縄跳び(を振り回した時)の動きが好きなんです。それからシュッという音も。だからこのふさ(持ち手のところに銀と青のふさがついている縄跳び)が重要なの。特に外で風がある時、鳥たちがいて木々があるところではね。そうすると物語のインスピレーションやメロディーが浮かんでくるの。

Alam Deutscher

この説明ではよく分からないところもある。完全に彼女一人の世界だからだ。でも、一人で外で木々や鳥に囲まれ、風を感じながら縄跳びの縄を振る時、その動きや空気を切る音からインスピレーションを感じ取るようだ。

ピアノに向かっている時ではなく、関係ないことをしている時にインスピレーションが湧くというのはよく分かる気がする。

こんな天才児と同列に語るのはおこがましいが、霧立も机に向かっている時より、シャワーを浴びている時、散歩をしている時によくインスピレーションが湧く。あわてて帰ってきて、ノートにメモするということもよくある。

五嶋みどりさんも、ジュリアードで学んでいるとき、ディレイ先生から美術館に行くようによくアドバイスされたという。ヴァイオリンに向き合っているだけでは、音楽に広がりや深みが出ないということだ。

五感を研ぎ澄ます

五感を使って外の世界に触れるというのは、とても重要だ。先ほどのアメリカでのインタビューの冒頭で、彼女はロスアンゼルスの印象を溢れるように語っていることに注目したい。

アルマ「ロサンゼルスは初めてですが、大好きです。全てが大きくて、パームツリーやオリーブの木があって、ライトがキラキラ光っていて、それからポップコーンが好きです!これまで食べたことなかったんですが。それからみんなおもしろい話し方しますね!(アメリカ英語のこと)」

彼女はこの時8歳。溢れるように彼女の口から出てくるこの感想に私は驚いた。日常の中での観察能力や感受性がとてつもなく高いのだ。

生育環境

自然豊かな場所で育ったアルム

一体、この感受性の高さはどういうところから来るのだろう?

アルマとその家族が住む家は、南イングランドのドーキング(Dorking)の近くの丘の上にある。見渡す限り草原が広がる人里離れた場所。

また家の中も別世界だという。化石や貝殻が飾られており、テレビはない。両親はテレビやアイパッドに対して、確固とした姿勢を貫いているという。

それから家の中には多くの蔵書、シュタインウェイのグランドピアノ、バロックフルート、モーツァルトの妹の肖像画、小さい頃から子どもたちが使ってきた分数ヴァイオリン、メンデルスゾーンの描いた風景画などがある。

アルマの作曲する曲はどれも古典的な雰囲気がするが、彼女の育った環境を考えると、なんとなくその理由が分かるような気がする。

両親

母親はケンブリッジ大学の古典学(詩)でPhD(博士号)を取り、父親は同大学の数学者、また言語学でPhDを取っている。二人とも物静かで、熟慮してから口を開くものをよく物を考える人たち。アマチュア音楽家でもある。

アルマの一日

では、アルマはどのようにして家で過ごしているだろうか?彼女の1日の過ごし方に触れておきたい。

アルマは一般の学校には行かないで、ホームスクーリングをやっている。

7:00 起床ースケールの練習ー朝食ー作曲や練習ー1:00 昼食ー2時間半の自由時間ー勉強(数学や歴史)-夕食&入浴ー8:30就寝

これにはかなり驚いた!

音楽の勉強は午前中の数時間だけ。もちろん、普通の子どもに比べたら大分長いが、普通の子どもはその間学校で他の勉強をしていることを考えれば、そこまで大変なことではないのかもしれない。彼女自身、こう言っている。

もちろん、私はとても一生懸命(音楽の勉強)やらなきゃいけないんですけど、他の子どもたちだってテストのために一生懸命勉強しなければいけません。それに私はとてつもなく素晴らしいことのために一生懸命やっているんです。

Alam Deutscher

ちなみに、彼女は「英語」はよく出来るので、全く勉強する必要はないとのこと。ホームスクールだから、このようにフレキシブルになれるし、ムリなく出来るのかもしれない。

また毎週金曜日はバレーを習いに行っており、その後は友達と遊ぶという。

カギは自由な時間

基礎練習が必要なのは言うまでもない。練習しないで上達する音楽家などどこにもいない。しかし、インスピレーションや、音楽の広がりや深みは練習だけでは決して得られない。

チョ・ソジン

カギは自由な時間にこそある。そこで思い出したのは2015年のショパンコンコール。小林愛実さんの実力は素晴らしく、ファイナリストにも選ばれ健闘していた。しかし、優勝したのはチョ・ソジン氏だった。

コンクール期間中も出来り限り練習していた小林さんに対して、チョ・ソジン氏の練習時間は3時間くらい。あとは散歩をしたりゆっくりお風呂に入って過ごしていたという。

優勝を逃した小林さんは、インタビューに対して「これからはもっともっと練習します」というようなコメントをしていたのを覚えている。なんだか痛々しかった。ゆったりのんびりしていたチョ・ソジン氏となんだか大分違った。

モンテッソーリ

モンテッソーリは子どもが自発的に何かを初め、それに集中している時は、子どもが自分からそれを止めるまで止めてはいけない、と言っている。大人にとってはそれはくだらない事に見えるかもしれないが、子どもにとっては重要な「実験」や「創造」の過程であることをモンテッソーリは分かっていた。

しかし、大人にはそれが分からない。だから

「何やってるの!キタナイからやめなさい!」

「そんなことしてないで、はやく勉強しなさい!」

と子どもが真剣に向かい合っている事がらを中断させてしまう。

何も知らない大人がアルマが縄跳びの縄をただぐるぐる振り回していたのを見たら、もしかしたら

「違うよ。縄跳びはこうやってやるんだよ。」

と縄跳びの綱を彼女から取り上げてお手本を見せようとするかもしれない。オペラの作曲がそれでダメになったとは、知る余地もないだろう。全く、恐ろしいことである。

おわりに

全ての子どもは、一人ひとり違った可能性をたくさん秘めて生まれてきた。みんなが音楽の才能を持っいるわけではない。しかもアルムのように目立つ才能ではないかもしれない。

もちろん、基本的な練習は不可欠。でも、どんなレベルであれ、音楽や芸術教育にインスピレーションやイマジネーションはとても重要。そしてそれは、自由な時間にこそ育まれるもの。

習い事や勉強、音楽の練習で子どものスケジュールをいっぱいにしても、子どもは辛いだけ。それよりも自由な時間をたっぷり与えてあげることで、イマジネーションは豊かになり、インスピレーションも沸く。アルムを通して霧立が強く教えられたことだ。

子ども時代は、人生の宝のような時期。その時期を幸せに過ごせたなら、その子どもの前途はそれだけで明るい。

子ども時代は短い。たったの15年くらいだ。親の務めは、幸せな子ども時代が過ごせるように、「自由な時間」を守ってあげることかもしれない。

 

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