
Photo credit: LC_24 on Visual hunt / CC BY-NC-ND
この記事は、
- イギリスの学校教育に興味を持っている人
- ハリーポッターファン
に向けて、現在のイギリスの学校にもある「ハウス制度」について書いていこうと思う。
ハウス制度は、集団主義的な「家制度」なのか?
『ホグワーツ』に見るハウス制度
初めて『ハリーポッター』の映画や本に触れた人は、「ホグワーツ」のハウス制度に新鮮な驚きを抱くのではないだろうか。詳しくない人のために少し触れておくと、新入生は入学時に四つの「ハウス」に振り分けられる。『ハリーポッター』でいえば、ハリーたちの「グリフィンドール」、「ハッフルパフ」、「レイブンクロー」、そしてマルフォイたちの属する「スリザレン」だ。
そして、生徒たちはハウスごとに寮生活を営み、誰かが学校生活で貢献的なことをすればそのハウスにポイントが加算され、反対に遅刻や校則違反をするとポイントが減点される。そして一年の最後に各ハウスの合計得点を集計し、一番多くのポイントを獲得したハウスが発表され盛大に祝われる、というわけだ。
私が初めに感じたことは、「なんだか楽しそうだけど、これって実はかなり不公平なんじゃないの?」ということだ。同じハウスになったというだけで、その日から卒業するまで、同じハウスの生徒たちは運命共同体となるからだ。「欧米社会は個人主義」と思っていただけに、集団主義的なハウス制度は、なんとなく相いれないものとして映った。
しかし、「ハウス制度って、直訳すれば『家制度』やん!」と思った時、結構ストンと落ちた。
欧米だろうがアジア諸国だろうが、「家族」や「家」はユニバーサル。親や年上の者が小さな子どもの面倒を見るし、親が失業したり事業に失敗でもしたら家族全員が節約生活を迫られる。古今東西、家族は運命共同体なのだ。
でも、個人主義が基本のイギリスでなぜハウス制度が生まれたのか、そしてそれは本当に家制度的なものなのか、歴史をたどって検証してみた。
ハウス制度の歴史
授業時間より多くの時間を寮で過ごす彼らにとって、ハウスはまさに家。そしてスポーツもハウス対抗だから自然と愛着や誇りも生まれる。
また年齢を超えた縦割り制度だから、ハウスキャプテン(=「長男」「長女」)を始めとして上級生が下級生の面倒を見る。また、マクゴナガル先生のようなハウスの教師は、「家長的存在」とでも言えようか。愛をもちながらも時には家の者にも厳しい措置を取る。
親元を離れた多感な十代の子ども達は、寮生活ではともすると孤独になりがち。だからこそ、ハウス制度が大事なわけだ。6年間同じハウスで過ごす中で、子ども達は強い絆を育むことになる。
なるほど、家庭的役割が「ハウス制度」として全寮制学校に導入された理由が、よく分かるような気がする。
現代のイギリスの公立小学校にも存在するハウス制度

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うちのユウは地元の小学校に通う4年生。私立でもないので当然寮生活をしているわけでもない。しかし、なんとしっかりハウス制度はあるのだ!
「ホグワーツ」同様、生徒は入学と同時に4つのハウスに振り分けられる(「組み分け帽子」じゃないけどね!)。名前は、近所の4つの丘の名前を冠している。ちなみにユウのハウスは「ハーバー(Harbor)」。
宿題を一生懸命やってきたり、授業態度が良いとポイントがもらえる。また、ハマイオニーのように素晴らしい解答をした時も、ポイントがもらえるらしい。
ある時は、それぞれのハウスの丘に登って証拠写真を撮ってきたら5ポイントもらえる、という一風変わったボーナスポイントもあった。ユウが「のぼる!」というから、真冬の風が吹きすさぶ中、家族全員でハーバーの丘を登って写真を撮ってきたものだ。
「ホグワーツ」と異なるのは、原則的に減点がないことだ。しかし、去年ユウのクラス担当だった若手のMiss. O先生は、悪さをした「犯人」が名乗り出なかったために、全てのハウスからポイントを差っ引くという暴挙に出たらしい。連帯責任を取らせるのは、日本だけではなかったのかと衝撃を受けたものだ。
それでも子ども達は、結構ハウス同士の競争や結束を楽しんでいるようだ。また、多く教師にとっても「生活態度が良くなった」とハウス制度は評判も上々。
それでもハウス制度は、やっぱり寮生活あっての制度だなあと霧立は思う。下級生は上級生を見倣い、上級生は下級生を助けるという家族的関係も、普通の公立学校だと限定的だ。寝食を共にするわけでもないので、当然だ。
別に公立校でやったっていいけど、家庭の代替としての「家制度」の良さは出にくい。残念ながら単なるハウス間の「ポイント競争」で終わってしまっていることが多いような気がする。
ハウスパーティーって、一体何やるの?
ちなみに、明日はユウのハウスであるハーバーの優勝パーティーがあるらしい。一体、何をやるのだろう?まさか、ダンブルドアのように校長先生が魔法で豪勢な食卓を出現させてくれるわけではあるまい。
さっそく、学校から帰ってきたイギリスの現役小学生をつかまえて、「突撃インタビュー」をしてみることにした。
霧立:「着ていく洋服はどんなかんじでしょうか?」
現役小学生:「ハウスカラーのふくだよ。ハーバーはRedなの。だからRedのふくを着ていくの。」
霧立:「なるほど!では、パーティーでは何をするんでしょうか?」
現役小学生:「あのね、まず、ハウスキャプテンがスピーチするんだよ。どんなことがよかったからwinしたか話すの。それからAppleたべるんだよ。(ハウスカラーの)Redだからね。あとApple juiceのんで、”H”って書いてあるビスケットも食べるんだよ(“Harbor”の頭文字の”H”らしい)。」
霧立:「パーティーは全部でだいたい何分くらいですか?」
現役小学生:「うーん、さんじゅっぷん!」
霧立:「ハーバーではない子たちは、その間なにをやっているんでしょうか?」
現役小学生:「あのね、べんきょしてるんだよ!」
なんと、驚いたことに、ハウスパーティーは授業時間に行われるらしい!
イギリスの学校は、こんな風にいつもどこか力が抜けている…。