山中家の丁寧で豊かな食卓
とっても丁寧な暮らしを実践している家族がいる。
山の中に住んでいる山中さん家族。家族ぐるみの付き合いで、一時帰国した時に彼らの家に数日間滞在させてもらったのだが、横着な霧立には驚くやら感心するやら、教えらえることが生活の中にちりばめられていた。
その一つが、食卓に箸休めがあること。
ゲストが来ているから特別にというわけではなく、山中家の食卓ではこれが日常。一つずつデザインが違うのもいい。お箸はみんなとてもシンプルな竹箸で統一していて、それがかえってお箸置きのデザインを妨げない。
その上使い勝手もとても良い!「いいでしょう、この竹箸。それにお高くないし。」と奥さんのまどかさん。霧立の「日本に本帰国したら買うものリスト」に即追加!
箸休めがあると、自然にガツガツ食べなくなるから不思議である。「私はここにいますよ。黙々と食べていないであなたのそのお箸、ちょいと一休みさせませんか?」と眼下の箸置きから誘われるのである。
しかもデザインが素敵だと、むやみにちょくちょく使ってみたくなるものだ。テーブルセッテッィングの時だけお箸を置いておくのではもったいない。
そうすると、今度は自然と会話が充実してくるのである!これまでモグモグやっていただけの口が、途端に咀嚼活動から解放されるので、「おお、じゃあここは一つ何かしゃべってみるか!」となるのである。視線も、食べ物から共に食卓を囲む人たちに向くようになる。お箸置きがリードする、食卓の会話!!
それからお箸を箸休めに置く動作は、何とも優雅であることに気付いた。お箸を揃えて綺麗に置いたり、再び取り上げる際には、ちょっとした集中力が必要とされる。まず、片手では出来ない。「箸の上げ下ろし」というのは、こういうことを言ったのか、と初めて知った。
箸の上げ下ろし、基本の三手
取り上げ方:① 右手でお箸の真ん中あたりを少し持ち上げる。
② 左手を添えて箸の左端を下から支える。
③ 右手をお箸の右端まで滑らせ、下の持ち位置に潜り込ませる。
下ろし方は「取り上げ方」の逆。③→②→①の順序。
お箸休めがなかったら、お箸をついバンッとテーブルに置いてしまったり、お箸の先がバラバラになったり、テーブルの上にソースが付着したりするだろう。
しかも、優雅な動作はポジティブなマインドを作るようで、口から出る言葉も話題もなんだか丁寧になるような気さえしてくるではないか。家族で囲む食卓が、お説教や小言の場所になったら、それは悲しい。
うーむ。小さなものだか、こうしてみるとお箸置きの存在は侮れない。
イギリスに帰った霧立家の実践
後日イギリスに帰国して…。
「さあ、さあ、お箸置きのある食卓よ!!」
と意気込んで始めた「箸置き生活」。
そうしたらなんと、食事中、私以外誰もお箸置きを使っていないではないか…!
ガーン。
息子のユウのお箸はあらぬ方向を向いて転がっている。マナブに至っては、お箸置きがあるのに、わざわざずらしてお箸を置いている…。
食後に食器を洗う時も、マナブはお箸置きを洗わないで引き出しにしまっているではないか!それもそのはず、使ってないから汚れていないのよぉー!!!
完全にお箸置きの目的を理解していない模様。
お箸置きは汚れてなきゃ使命を果たせてないの!!
霧立一家、まずは「お箸置きの目的と使い方」のレクチャーから始めないとダメということが判明。
お箸置きがあれば、それで優雅で和やかな食卓がすぐに出現するわけではなかった。当然といえば当然すぎる。お箸置きは魔法の杖ではない。しかし、取り組み方次第でお箸置きは「丁寧で豊かな暮らし」をもたらすポテンシャルをかなり秘めている、と霧立は思う。