子どもが幼稚園に入る年頃になったら、多くの親が「習い事」について考え始めるだろう。「何を習うか?」はもちろん大事だが、「どんな先生に付くか?」というのはもしかしたら一番大事なことかもしれない。
「どんな先生に習うのか」ということで、その後の方向性が決定されると言っても過言ではないからだ。習い事の先にあるのが、「楽園」に続く道なのか、「雑草の生い茂った魅力ない空き地」なのか、はたまた「苦行の地獄」なのか…。
わたくし霧立灯は、小さな頃からヴァイオリンを、姉はピアノをかなり一生懸命習ってきた。そのため、色々な教師を見てきた。
演奏が上手な先生がいい先生とは全然限らない。「やっぱり芸大出身の先生に習いたい!」という選び方は正直どうかと思う。
今日は、楽しく習い事を続けるためにカギとなる先生の素質について、特に楽器の習い事の観点から考えてみたい。
子どもの習い事で選びたい「良い先生」とは?
楽しくレッスンしてくれる先生
子どもが小さい頃は特に、「レッスンが楽しい」というのは最も大事なポイントだ。「そんなこと、分かってるよ…」という読者のため息が聞こえてきそうだ。
しかし「楽しくレッスンする」というのは、実は綿密な計算の上に成り立っていて、これを出来る教師は多くはいない。子ども好きの先生がただ優しく楽しくレッスンする、というのとは全然違う。
ただ子どもを楽しませるだけで、教育効果の低いレッスンでは仕方がない。楽しいレッスンの秘訣は、子どもの自律性を促し、励ましながら成長をサポートすること。
え、全然分からないって?
それでは、ユウのピアノの先生、カーチャの教え方から具体的に説明していきたい。
初めに弾かせる時は、途中で止めない
誰だって弾いている時に途中で止められるのはストレス。まず初めは最後まで弾かせ、前回より上達していたら、まずそこをすかさず褒める!
課題は自分で探させる
「どこが難しかった?」「もっと練習が必要なところはどこだと思う?」と子どもに聞く。「ここはダメだったわね」ということは一言も言わない。そして効果的な練習方法を教えてくれる。
一度にたくさんのことは求めない
カーチャのレッスンを見ている時、(え?!そこスルーなの?)と思うことが度々ある。霧立だったら、絶対ダメ出ししていただろうな…という箇所なのに指摘しない。
子どもの能力に合わせて、改善できそうなところから一つずつ指導していくのだ。
その場で完璧を求めない
子どもが一生懸命改善しようとしている時、少しでもコツをつかんでいたら「そうそう!その調子!」と励ます。霧立なら(まだまだダメじゃん…)と思ってネチネチ練習をさせてしまいそうだが、カーチャはその場で完璧を求めない。
小さな進歩を励まし、長い目で出来るようになればいいと考えているようだ。
ゴールは子どもに決めさせる
評価もゴールも子どもに決めさせるのがカーチャ流。
- ★ 譜読み段階
- ★★ 最後まで弾けるが、たくさん間違える
- ★★★ 2,3回しか間違えずに最後まで弾ける
- ★★★★ ほとんど間違えずに暗譜で弾ける
- ★★★★★ コンサートレベル
★3つになれば、その曲は上がれるルール。しかし「最終的に★いくつまでもっていきたいか?」は子どもが決める。
「今週は★いくつまで来たと思う?」と毎回生徒自身に聞く。カーチャの方から評価を下すことはない。子どもは自分で毎回進捗を評価し、ゴールを設定するので、「やらされている感」がないようだ。
また、コンクールに出たいかどうかは子どもの意志を尊重してくれる。子どもに聞きもせずに「この子をコンクールに出しましょう!」「音高目指しましょう!」などと言う先生は、要注意。
曲は子どもが選べる
次の曲に入る時は、子どもが好きな曲を選ぶことが出来る。子どもは自分の好きな曲が出来るので、やる気満々。難しすぎる場合は、簡単なヴァージョンをカーチャが探してきてくれる。
ちなみに我が家のユウはコレが気に入って、ただ今練習中…(もちろん簡易バージョン!)。すんごい面白いからぜひ聴いてみて!
高い音楽性を求める先生
「よい先生」の大事な資質の2つ目として、「高い音楽性を求める」ということを挙げたい。一見「楽しいレッスンと両立するの?」と疑問に思うかもしれない。
「この音の意味は何?」「このメロディーはどんな景色を描いていると思う?」「ここでささやいているのは誰かな…?」
カーチャは当時小学1年生だったユウにも音楽の解釈を求めたので、霧立はとても驚いた。想像力を膨らませるために、曲と関係のある絵本を貸し与えてくれることもあった。

イマジネーションを高めるために、いろんな刺激をくれる先生は素晴らしい。
よい先生は、ただ正確に弾くだけではなく、高い音楽性を求める。いや、もしかしたら正確に弾くことよりも高い音楽性を求める、と言ったほうが正確かもしれない。
小学生高学年くらいになると、ただ弾くだけならかなり難しい曲を弾ける子も出てくる。しかし、技術が高くなればなる程、音楽性の貧しさは打撃になってくる。
小さな子どもにも分かる表現で(←ここが大事!)、高い音楽性を求める先生は立派だ。
基本をおろそかにしない先生
姿勢、手や指の形、手首や腕の使い方などに注意を払うことはとても重要。それは発音に影響するからだ。また、こういう基本をおろそかにすると、上達の限界がすぐに来る。

こういう風にヴァイオリンを弾く人は…見たことがありませんね…。ある意味名人芸?
また、スケール、練習曲、ソルフェージュ、音楽理論なども織り交ぜてバランスよく教えてくれることも重要だ。しかしスケールや練習曲はともすると、とっても退屈…。これで、練習嫌いになる子どもも多いはず。
でもよい先生は、引き出しがいっぱいある!練習曲ですら、美しいメロディー、楽しいメロディーが詰まった本を紹介してくれるのだ。
これはカーチャに教わった練習曲の教本。練習曲なのに、メロディーがとても美しいので、ユウも喜んで弾いている。(Volume 2は中級者向け。)
ヴァイオリンではこちら(↓)がおススメ。
「ホーマン」は2つのヴァイオリンで奏でる練習曲。美しいハーモニーを一緒に楽しみながら音程やアンサンブルを早い段階から学べるので、親が弾ける場合は特におススメ!(レベルに応じて1~4の中から選べる)
「篠崎バイオリン教本」は基本を細かく勉強できる外せない一冊。またピアノの伴奏がついているので、練習曲でも楽しく弾ける。
バイオリンの先生はピアノがそこまで上手でない可能性があるが、もし親がピアノを弾けるならもってこいの教本。私も日本から取り寄せたほど(イギリスだと高い!)。
毎日練習を求める先生
毎日最低でも30分練習しなければ、楽器はなかなか上達しない。なかなか上達しないと、「面白い!」と思えるまでに長い年月がかかってしまう。
我が家の例で言えば、ユウは5歳からピアノを始めて「面白い!」の境地に至るまでに約2年かかった。初めの2年は30分練習させるのが本当に大変だったが、今では練習はすっかり好きになり、放っておくと1時間でも練習していることがある。
一方、ヴァイオリンは毎日15分(さすがにピアノと両方だと1時間以上になってしまうため)。ピアノが弾けるので音楽の基礎があることと、私が付きっきりで教えているため、上達は早い。しかし、ヴァイオリンを始めてまだ9か月なので「面白い」という境地にはまだ程遠い。
レッスンが厳しい必要はない。しかし、「練習してこなくてもあまり問題にしない」という態度の先生は…どうかと思ってしまう。
親にメモを取らせる先生

まどろんでいるヒマはありません!霧立のメモ帳は英語と日本語、音符の走り書きでいっぱいです。
よい先生は、レッスン中に親にメモを取らせる。小さい子供の場合、レッスンで何をアドバイスされたか全部覚えていられないからだ。
そして、日々の練習でもある程度親がサポートすることを期待する。だからレッスン中は、親もしっかり先生の言うことを聞いていなければいけない。
子どもだけ先生の家に送り届け、レッスンが終わったらまた迎えに来る、というのではダメ!
どうやっていい先生を見つけるの?
では、そういった「よい先生」をどこで見つければいいのか?
発表会を聴きに行く
発表会に行くと、その先生の教え方がよく分かる。お弟子さんたちのレベルだけでなく、楽しそうに弾いているか、つまらなそうに弾いているのか、ということを見て欲しい。
霧立の姉が習っていたピアノの先生の発表会のレベルはとても高かった。お弟子さんたちは、ミスもなく、テクニックも高く、完璧に弾く子が多かった。
お弟子さんたちはコンクールで入選したり優勝したり、有名な音高に行ったりしたが、その後の人生で幸せにピアノを弾き続けた者はほとんどいない…。先生は「超」が付くほど厳しかったのだ。
多少間違っても、楽しく音楽性豊かに弾いているお弟子さんが多い発表会は、「よい先生」が教えているサインだと思う。
数回レッスンを受けてみる
口コミなどから探し当て、数回レッスンを試しに受けてみるのもいい。先生との相性、目指している方向性などを見る絶好の機会。
優しいだけの先生じゃないか、この先生なら子どもを尊重しつつ上達をしっかりサポート出来るのか?ということを見極めたい。
いかかでしたか?
先生選びは重要ですが、「違うな」と思ったらいつでも変えられますので、楽器を買う時ほど神経質になる必要はないです。(ヴァイオリンを買うのが死ぬほど大変だったブログ記事↓)
ちなみにユウの先生カーチャはロシア人です!音大でピアノを学んだ他、児童心理学、音楽教育法など熱心に学んできたと聞いて、「なるほど~」と思わされました。
みなさんの出会った音楽の先生は、どんな人ですか?どんなところが良かったか、ぜひ教えてください!
霧立は自分でユウにヴァイオリンを教えているので、参考させていただきたいです。