【英国産リサイクル・ウール】エコでほっこり温まろう。
先日、家族旅行でイングランドに行った時、素敵なブランケットに出会った。色とりどりのタータンチェックのラフなブランケット。
寒い季節、ブランケットにくるまって読書をするのは至福の時。特にスコットランドは一年中寒いので、ブランケットはいつだって重宝する。
旅先で見つけたこのブランケット、お値段はなんと£16(約2400円)。安さの秘密は、「リサイクル・ウール」(”Recycled Wool”)にあった。
リサイクル・ウールとは?
「リサイクル」と聞くと、古紙やペットボトルを思い浮かべる人も多いだろう。しかし、ウールも、まさに古紙やペットボトルのようにリサイクルできるのである。霧立も初耳だった。
手持ちのセーターやマフラーの表示を見てもらえれば分かるように、最近ではウール100%の製品は少ない。このように、そもそもリサイクルの対象となる衣類がウール100%でない場合もあるので、リサイクル・ウールで再生された製品もウール100%でない場合がある。
これに対して、羊の毛を刈って毛糸にして染色したウールを「ヴァージン・ウール」(”Virgin Wool”)という。日本で流通しているウール製品は、ほとんどがこのヴァージン・ウールであろう。
リサイクル・ウールがエコな理由
「リサイクル」といえばエコ。ではこのリサイクル・ウールはどういった点がエコなのだろう?
ゴミの削減
穴のあいたセーターを可燃ごみとして捨ててしまえば、ただゴミを増やすだけ。リサイクルすれば当然ゴミを減らせる。
ウール製品はその他の繊維製品と比べてリサイクルが簡単。合成繊維の衣類は現在の技術では、ウールのようにリサイクル出来ない。ウールはリサイクルの再利用期間も含めれば20~30年使用出来ると言われている。
リサイクルしないのはもったいない!
資源の削減
ウール製品を作るには、少なくとも次のようなプロセスが必要だ。(詳しくはこのイラスト)
- 羊の放牧
- 羊の毛刈り
- 刈った毛の輸送
- 水(刈った羊の毛を洗い、繊維に加工する過程。)
- 染料で毛を染める
- 毛糸を作り出荷
- 製品を作る
- お店に出荷
このように広大な土地、水、ガソリンが使われている。ウールをリサイクルしたら、このうちかなりの資源が節約できることになる。
温暖化防止
羊や牛のゲップはメタンガスを放出するとして有名だ。そしてメタンガスは二酸化炭素の25倍の温暖化効果があると言われている(毎日新聞2010/06/03)。ニュージーランドでは、国内で排出されるメタンガスの45%が羊と牛のゲップからだそうだ。
リサイクル・ウールを使うことで、羊の放牧数を抑え、羊のゲップを減らし、温暖化防止につながるというのも本当にありそうだ。
リサイクル・ウールの使用感
「リサイクル・ウールがエコなのは分かったけど、使用感はどうなの?」という疑問を持つ読者もいるだろうう。
リサイクル・ウールは、ヴァージン・ウールに比べて、多少ゴワゴワ、チクチクしている。セーターとして身に着けるのにはあまり適していない。
しかし、ひざ掛けブランケット、ポンチョ、ラグとして使用するには全然問題ない。イギリスではピクニック・シートとしても売り出されているが、とてもラグジャリーな感じ!
霧立の買ったリサイクル・ウールのブランケットは軽くてとても温かい。合成繊維のブランケットとは比べ物にならない!
しかも何年も使っていけば、きっとこのゴワゴワ感も程よくクタクタになっていく予感。耐久性もありそうだ。
ブランケットの味わいは、使い込んでいくうちに出てくるものではないだろうか?ちょうど麻がそうであるように。
リサイクル・ウールはブランケットにはもってこいだ。
どこで買えるの?
リサイクル・ウールのマーケットは、まだ日本では小さいようだ。しかしアマゾンでも買えるようだ。興味のある人はぜひ参考に。(一番右はイギリスのアマゾン)
どこでリサイクル出来るの?
イギリスの場合
イギリスには、ゴミの分類のうち「リサイクル衣類」というのがある。今まで霧立は「また着れる服」の回収かと思っていた。
霧立が捨てる衣類は穴があいていたりするので、「人様にまた着てもらえるような状態ではない」と判断してこれまで「可燃ゴミ」に捨てていた。しかし、ウールであれば穴があいていようがまた紡ぎなおしてリサイクル出来ることを今回知った。
イギリスではリサイクル・ウールの歴史は長い。おそらく、羊を放牧し、ウール製品を生産するプロセスが可視化されているので、「リサイクルする」という発想につながりやすいのだろう。
そもそも、戦争中に軍服に使われるウールが優先されたため、人々は自分たちの古くなったセーターをほどいて、靴下を作ったりしていたようだ。
日本の場合
日本では「ウール=輸入するもの」つまり「自分たちで作らない」という構造があるため、リサイクルするという発想につながらないのだと思う。
しかし、調べてみたら次のようなところでウールの回収をしていた!
① 高島屋
「着る予定のないウール60%以上の衣類は、ぜひタカシマヤにお持ちください」と呼びかけている。しかし、これは自動車の断熱材に再利用されるらしく、衣類やブランケットになるわけではなさそうだ。しかし、ゴミになるよりはずっといい。回収についてくわしくはこちら。
② AOKI
AOKIは1996年に日本初の「ウール・エコサイクル・プロジェクト」を立ち上げた。20年前からとはなかなかスゴイ!
着なくなったスーツなどのウール衣料を回収し、提携工場で様々な製品に加工するという。しかも店舗に持ち込めば、クーポンで下取りしてくれるという。
個人的にはエコは企業と私たちが一体となってやるべきものだから、クーポンなんて配る必要ないと考える。でも、多分そうしないと持ってくる人が少なくなってしまうという現状があるのだろう。
回収されたウール衣類は、自動車の吸音材や防寒手袋、モップ類になるらしい。AOKIの詳しい取り組みについてはこちら。
豊かな暮らしはエコに近い
今回、イングランド旅行で出会ったこのリサイクル・ウールのブランケット。直観的に霧立の人生観、ライフスタイルに合っていると感じた。
近年のファッションは、”Fast Fashion”(「ファースト・ファッション」)だと言われている。つまり、目まぐるしく変わる流行に合わせて、着る服もさっさと買い替えていく。だから、衣類の素材も安価な「ポリエステル」とか「アクリル」などの合成繊維が多い。
霧立はエディンバラの街中を歩いていても、「買いたい」と思うファッションのお店が少ないといつも思っていたが、そういうことだ。どこもペラペラの安っぽい合成繊維の服ばかりだからだ。
低品質のものを低価格で売って、すぐ次の流行に向けてまたチープな衣類を作る。ファースト・ファッションは大量消費につながっている。
事実、衣服のゴミは年々増加して問題となっている。北米では年間一人当たり37㎏の衣類を購入するという。世界平均の13㎏のおよぞ3倍だ。
そして、合成繊維はリサイクル出来ないので、ゴミとして焼却されるだけ。
質の高いものを買って丁寧に長く着る。値段は合成繊維より高いが、コストパフォーマンスはいいはずだ。また、天然素材は自然環境にもやさしい。
流行に左右されない生き方は豊かな生き方であり、エコでもある。
目下のところ、霧立は美しい仕立てのツィードの洋服をウィンドーショッピングで眺めて目の保養をしている。合成繊維の服の何倍も高価だから、そう簡単に買えない。
でも、いつか買えるようになったら、きっときっと大事に長く着て、着古したらリサイクルに回そう。