学校給食とベジタリアン
はじめに
先日、捕鯨問題について書いていたら、下関市の小学校の給食で鯨肉が出されていることを知った。わたくし霧立灯は捕鯨に反対なので、自分の子どもがその学校に通っていたら嫌だな…と感じた。
昔から捕鯨とかかわりの強い下関では、捕鯨反対派はマイノリティーなのかもしれない。しかし他県から引っ越してくる家族もいるはずである。もしかしたら外国から引っ越してくる人たちだっているかもしれない。
そんなご時世の中、公立小学校の給食でわざわざ問題となっている鯨肉を出すのは一体どうなのか?マイノリティーや違う意見を持った人に対する配慮が欠けていたのではないか?
そこで今日は、学校給食とベジタリアンについて考えてみたい。
学校給食の現状
日本の場合

「同じメニューのものを一緒に食べる」が原則の日本の学校の給食。
- 単一メニュー
- アレルギー対応あり(除去食)
- 宗教対応、ほぼなし
- ベジタリアン対応なし
【アレルギー】
2012年に調布市の小学校でアレルギーのある児童が給食後にアナフィラキシーショックで死亡する、という痛ましい事故があった。それ以来、さすがに学校側は全力でアレルギー対応をしている。
【宗教的理由】
宗教によっては、禁忌(タブー)となっている食材がある。有名なところでは、
- ヒンドゥー教徒にとっての肉
- イスラム教徒にとっての豚肉
しかし、文京区教育委員会は、
アレルギーの場合は生命の危険性があるために代替食を提供するが、宗教的なことに関しては個人的な理由として提供できない
として、インドネシア人生徒に豚肉除去食を提供することを拒否している(2011年9月)。命に関わらなければ、マイノリティーの思想信条は軽視されるのが日本だ。
しかし移民の受け入れが進むことを考えると、これからは彼らのニーズに応える必要が出てくるだろう。
【ベジタリアン】
ベジタリアンもまた、アレルギーのように命に係わる問題ではないので、信仰と同様に日本ではどうも軽く扱われているような印象を受ける。「単なる好き嫌い」(=わがまま)だと勘違いされている傾向もまだあるようだ。
イギリスの場合

✔ はベジタリアンオプションのメニュー。メニューはどれも1日£2.2(約330円)。経済的に貧しい家庭は審査に通れば無料。
イギリスの公立学校の場合、給食には必ずベジタリアンメニューがある。最低2種類のベジタリアンメニューがある他、月曜日は”Meat Free Monday”(「肉なし月曜日」)で、肉は一切出ない。
ちなみに我が家の息子、ユウの通っている小学校では数年前から牛乳も出なくなった。ドリンクは水のみ。
その他、お弁当の持参も可能で、実際大半の子どもがお弁当を持参。みんな自分の好きなものが食べられる体制が整っている。
ベジタリアンの子どもはどうしたらいいのか?
このように日本の学校では、ベジタリアンやヴィーガンの子どもたちは生きにくい。では一体、どうしたらいいのだろうか?
【子どもと相談!】
まずは子どもと相談するのが、とにかく大事。子どもを通り越して、学校や先生と相談しない。学校生活は、親のものではなく子どものものである、ということを親はつい忘れがちだ。
子どもは小学生くらいから、「自分が周囲から浮いていないか?」ということを気にし始める。いくら正義でも、子どもの理解が得られていない場合、みんなと違う行動をとるのは相当なプレッシャーになるはずだ。
かくいう私も、親からの押し付けで小学生時代は紺色のランドセルを背負わされ、それはそれは大変な思いをした。600人の児童の中で、女子で赤いランドセルをしょっていないのは姉と私だけだった時代。
幸い、私はマイノリティーでいることを受け入れ、克服した。しかし、全ての子どもが耐えられるわけではない。
ベジタリアンという主義をつらぬくのは立派なことだが、子どもの学校生活、人間関係を台無しにしてまでつらぬくのはどうかと思う。

子どもの強い意志と親のサポートがなければ、学校でベジタリアンを通すのは難しいのが日本の現状。
まずは、
- 子どもがベジタリアン(あるいはヴィーガン)としての姿勢をつらぬく覚悟があるのか?
- 親がそのサポートを最大限するという覚悟があるのか?
を十分家庭内で話し合うべきだ。
提案1 ダメもとで学校に交渉
ベジタリアンが単に「嗜好」や「わがまま」でなく、信条であり生き方そのものであるということを説明。そして除去食を出してもらえないか、という交渉をする。
提案2 代替品のお弁当(一部給食)
給食の献立を見て、食べられるものだけ給食で食べ(白米やパンなど)、おかずはお弁当として持ち込みという形態。
汁ものに入っているお肉などは、配膳が終わって「いただきます」をしてから大鍋に戻しに行く。(ベジタリアンにとっては、食べない肉魚を残して残飯にするということは耐え難いことだからである。)
提案3 完全にお弁当
これは配膳中にその子供だけ手持ちぶさたになるので、「自分は自分」と思える子どもでないとちょっと厳しいかもしれない。なにせ、日本の学校はいつでもみんなが「一斉」に行動するので、少しでも違う行動をしているとそれだけで浮いていしまうのだ。
メリット
- 代替のお弁当持ち込みと違って煩雑さがない。
- 他の子どもがうらやましがるような美味しそうなお弁当だったら、疎外感やストレスが緩和される可能性も大いにある。
デメリット
- 「完全マイノリティー宣言」になるので、子どもによってはかなりのストレスになる場合も。
*この「izumimirunの5分で出来る楽vege弁当」は、お弁当の美しい詰め方や彩を美しく見える方法も載っていると好評だ。
賢く周囲の理解を得る方法
日本ではベジタリアンはまだまだ少数。ヴィーガンに至っては「別の惑星の人」的な感覚かもしれない。
「違う」というだけで「変な人」というレッテルを貼られやすい日本は、マイノリティーにとって非常に生きにくい社会である。
違う生き方をしている私たちは、自分たちからコミュニティーに賢く働きかけをしていくことが大事である。
- 子どものクラスの親と友達になる!
- 食事に招待しておいしいベジタリアンを体験してもらう。
- 畜産業の現実について話す
- 飢餓の問題について話す
- 菜食主義のメリットについて話す(健康、美容)
子どもというものは、親同士が友達になると、子ども同士の距離もぐっと近くなるものだ。だから、他の親と仲良くなっておくことは、子どもの人間関係を取り持つ上で結構大事。名付けて「親外交」。
後は、ベジタリアンがいかにいいのかを多角的に話す。動物愛護だけだと弱い。動物愛護に鈍感な人には説得力に欠けるからだ。

実際、ベジタリアン/ヴィーガンフードは、驚くほど美味しい!多くの人は、「野菜=味気ない」と誤解している。
飢餓問題、健康問題、美容など、とにかく相手の関心にヒットしそうな切り口で説明できるようにしておく。これは日常的に子どももしっかり話しておくべきことがらだ。
おわりに
子どものベジタリアンやヴィーガンが大人以上に周囲に受け入れられないのは、それが「親の押し付け」だと思われているからではないだろうか?
「給食でもお肉やお魚を食べさせてもらえないなんて、かわいそう」と思われがちなのだ。だからこそ、子どもが自分の意志でベジタリアンをつらぬく姿勢が大事。
ベジタリアン、ヴィーガンの生き方が正義でも、他人にそれを強要することは出来ないはずだ。相手があなたの子どもであったとしても、それは変わらない。
教えながらも、子どもの意志を尊重すること。気長に待つこと。
特に学校の現場では。なぜならそこは、子どもの生きる場所だからだ。
ベジタリアンは「嗜好」や「わがまま」ではなく、生き方そのもの。それを尊重しないことは、人権の否定に等しい。
日本の学校でも、ベジタリアンメニューが出来たり、お弁当を楽しく食べられる雰囲気が早く実現するように、願っている。
【子どもも喜ぶ「肉もどき」のレシピ本】
「もどき=代用品」でなはく、もはや本物を超える美味しさ。手に入れやすい材料で、和・洋・中のこってりレシピがヘルシーに大変身。また、スィーツまで載っているのも嬉しい。
【この記事を書くにあたって参考にしたその他の記事】- One day a week can meke a world of difference
- School should have one meat-free day a week, says charity