
前回、電子ピアノより断然ピアノを選ぶべき理由を書いた。
今回は、100万円の予算でベストなピアノはどれか?という視点で書いていこうと思う。
中古ピアノ vs 新品のピアノ
これは、ヴァイオリンの時にも散々考えたトピックだ。結論から言うなら、「ピアノは新品の方がいい」、というのが色々な店員さんから話を聞き、また指弾をした後の霧立の結論。
もちろん、そもそものピアノ自体の楽器的な実力や、コンディション、年数にもよるので一概には言えない。しかし、同じメーカーの、同じランクのピアノだったら、中古より新品の方がいい。
なぜなら、ピアノは20~30年経た時に、大々的な点検とパーツの交換が必要になることが多いからだ。市場に出回っている中古ピアノは、1990年代~2000年代前半が多い。となると、そのようなピアノを買って10年もすれば、間違いなくパーツの交換が必要になってくるといっていい(音にこだわらなければ、別に必要ないが)。
それに、音大生がガンガン弾いていたピアノなどは、消耗・劣化も早い。同じ「中古10年」でも、誰がどのように弾いていたかでコンディションもまちまちだ。
グランドピアノに勝るアップライトピアノは存在するのか?
「最上のピアノはやっぱりグランドピアノ」。
そう考えている人は多いのではないか?もちろん、プロのピアニストでコンサートの時にアップライトを選ぶ人はいないので、あながち間違いではない。

でも、「グランドピアノだからといって必ずしもアップライトより優れているわけではない」というのもまた事実。グランドピアノにもピンからキリまであるあからだ。「イタリア製のヴァイオリンだから優れているわけではない」「オールドヴァイオリンだから優れているわけではない」というのと同じである。
実際、これまでマナブ(アマチュアピアノ弾き・夫)が色々なところでピアノを弾いてきて、「あれ?このピアノ、グランド並みの音がする!」と思ったことが数回あった。
中でも、今回のピアノ選びですぐに霧立家全員がとりこになったのは、グランドピアノの音色を持った、Boston(ボストン)のアップライトだった。
Bostonのアップライトピアノの魅力
霧立家のピアノ予算は100万円(ヴァイオリンとかなり違う…)。それにグランドピアノを置くスペースもなかったものだから、初めからアップライトピアノに絞って指弾をした。

ヤマハ、カワイだけでなく、スタインウェイ、ベヒシュタイン、ペトロフなど外国製のものも弾いた。その中で、ずば抜けてよかったのがこのボストンの新品のアップライトピアノだった。

まず、小さなアップライトとは思えないほどのパワーに圧倒された。それから透き通る音、伸びやかな音、しっとりとした音、芯のある温かみのある音、倍音が豊かで表現力豊かな音…。
マナブが弾いていたら、店員さんも「このままCDに出来そうなくらいいいですね」と褒めてくれたが、本当にその場にいた誰もが息を飲むほど美しい演奏だった。
なぜボストンのアップライトは、その辺のグランドピアノよりいい音がするのか?
ボストンのピアノは、スタインウェイ(世界最高峰のピアノ)に近い音がする。それもそのはず、ボストンは、スタインウェイの設計でカワイが製作したピアノなのである。スタインウェイのホームページには以下のような説明がある。
スタインウェイ&サンズ独自の特許技術と専門知識を駆使して設計されたボストンシリーズのグランドピアノとアップライトピアノは、スタインウェイのDNAを受け継ぐ存在であると同時に楽器製作における比類なきレベルに到達し、これまで考えられなかった価格水準で上質な演奏体験を提供します。
Steinway & Sons
そう、「スタインウェイのDNA」。スタインウェイと同じではないけれど、スタインウェイの面影をしのばせる音をボストンは持っている。

ボストンのアップライトは、3つのモデルがある。
・UP-118 (112万円)
・UP-126 (177万円)
・UP-132 (188万円)
3桁の数字は、アップライトピアノの高さを表している。一般に高さが高い方が弦が長くとれるので響きが優れている。
ちなみに価格は、メーカー希望小売価格。お店によっては多少の価格交渉は可能なので、ぜひやってみてもらいたい。

これまで霧立家で使われてきたピアノは、132センチのヤマハのグレードの高いアップライトだった。しかし、ボストンのUP-118(一番背の低いタイプ)は、それよりも格段に良かった。
「背が高い=良い音」と思い込んでいた霧立には衝撃的だった。
店員さんによると、「スタインウェイはそもそも設計や材料が他とは全然違う」のだそう。ボストンも、アップライトの裏面にある反響版がはんぱなく分厚い。同じ大きさのアップライトより40キロ近く重い、と運搬してくれた業者の方も言っていた。

一番背の高いUP-132ともなれば、多くのグランドピアノを凌駕するパワーと音色になるとホームページで言われていたが、それも容易に想像できる。一番背の低いUP-118でも、そのへんの中古のグランドピアノよりずっとよい音がしたからだ。
ボストンのアップライトの弱点
しかし、そんなボストンのアップライトにも、グランドピアノに勝てない部分がある。それは、トリルの時のリターンが遅いということ。もちろん、遅いと言ったって弾けないわけではない。しかし、物理的にアップライトがグランドピアノにどうしても勝てない部分だと言われている。
一つ目のハンマーはアップライト。二つ目がグランドピアノのハンマー。重力の作用で、グランドのハンマーの方が戻りが早いのが分かる。
まあ、グランドピアノをずっと弾いてきた人には感じるくらいで、これまでずっとアップライトを弾いてきた人にとっては問題にならないことかもしれないが。
ボストンピアノの注意
ボストンピアノは、調律が難しいと言われている。日本で広く普及しているヤマハやカワイとは違い、スタインウェイ設計なだけにスタインウェイピアノの調律師に任せた方がよいそうだ。
いかがでしたか?
霧立は本当はウォールナッツ色のモデルが気に入っていたのですが、同じモデルでも30万円の開きがあったので諦めました。ヴァイオリンは骨董品的な価値もありますが、ピアノを弾く人たちとってはピアノの「見た目」は全然気にならないようで、お店でみんなに笑われた霧立です。
ボストンピアノをお考えの人は、スタインウェイ正規特約店をお勧めします。以下はおススメのピアノ屋さんです。
・GG グランドギャラリー
愛知県岡崎市が本店。何千台もピアノがあります!中古がメイン。最高技術責任者・調律師の自称「塩ちゃん」(塩崎さん)は、本当に自由自在に「出したい音」をその場で作り出して下さります。(子守りの天才でもある…。)
・ピアノプラザ群馬
関東近郊なら、ここもおススメ。中古から新品まで、国内外のメーカーを広く取り扱っている。ここにイケメンピアニスト、クリスティン・ツィマーマン(世界的ピアニスト!)が実際に弾いてお墨付きを与えたスタインウェイのコンサートグランドピアノがあった。マナブが弾いてみたら……天上の音がそこに流れ出た。「こんなピアノを持っていたら、(ピアノにのめり込んみすぎて)人生狂っちゃいますね」と思わず言ってしまった、そんなピアノ。お値段は2千万円。
・名古屋調律センター
住宅街にぽつんと佇むピアノ屋さん。「調律センター」とあるが、ピアノもたくさん売っている。台数は上の二つに比べると少ないが、良心的なお店。
ピアノを探している方、よいピアノに巡り会えますように!