
わたくし霧立灯は昨年(2018年)、ロンドンでヴァイオリンを買った。幸いにも、日本でだったらとても手が出ないクラスの物を手に入れることが出来た。
そのことを当ブログに書いたら結構反響があり、中にはロンドンまで楽器を買いにくる読者が出てきた!今回霧立は、通訳&コンサルタントとして日本から買い付けにやってきた読者に同行。
密着3日間のヴァイオリン購入の様子と、今度ロンドンで楽器の購入を考えている人に向けてアドバイスを書こうと思う。
今回ロンドンにヴァイオリンを買いに来た人たち
立花さん(仮名)親子。都内の某有名音楽高校(以後、「音高」)に通う娘さんのために、新しい楽器をお求めとのことだった。
すでにイタリアの楽器をお持ちだったが、試験やコンクールでよい成績を収めるには、さらによい楽器がどうしても必要になってくるのである。そして、驚いたことに、彼女の通う音高では1千万円以上のヴァイオリンを持っている人も珍しくないとのこと。
高校生に1千万円以上の楽器デスカ?!
全くスゴイ世界だ…。下にもヴァイオリンをやっているご兄弟がいるとのことで、今回霧立のブログを読んだ立花さん親子は、「1千万円クラスのヴァイオリンを半値で手に入れたい!」とロンドン行きを決心されたそうだ。
・立花さんのご予算は£40,000(約550万円)。
・プロを目指す音高生のお嬢さんのための楽器をお求め。
スケジュール
立花さん親子がロンドンに滞在したのは全部で5泊6日。そのうちヴァイオリン購入に充てたのはたったの4日間!ヴァイオリン購入に半年近くかけた霧立からは信じられない短期間で、初めはどうなることかと思ったが、最終的には4日目に支払い手続きをすることが出来た。
それぞれの楽器店で1~4本の楽器を予算内で用意してもらっていた。 2日目が終る頃、すでに立花さん親子はTarisioの1本に絞り込めていた。


3日目午後:価格の交渉。そして契約書にサイン!!
3日間というスピード契約!!


・土曜日は閉まっている楽器店も多いので、日程を組む際には要確認。
・オークションハウス(TarisioやIngles & Haydayなど)でも、オークションとは別に一般販売(Private Sale)もやっているので、問い合わせてみるといい。
・かなりの強行スケジュールだったので、娘さんは試奏で相当疲れた模様。可能ならば、もうちょっとゆとりのあるスケジュールの方がいいかも。
立花さんが手に入れたヴァイオリン

20世紀の卓越したイタリアの製作者の楽器だ。ほとんどのヴァイオリン製作者は、ストラディバリウスやグァルネリを模倣するのだが、この製作者が模したのはガリアーノ(Gagliano)。
私はモダンイタリアンの魅力の一つはそこにあるように思う。巨匠ストラディバリウスやグァルネリと同じ国に生まれた彼らだからこそ、「ストラデに頼らずとも、自分たちだって最高のものが生み出せるはず!」といった自由や気概にあふれていたような気がするからだ。
ストラディバリウスを絶対化してコピーを作るのではなく、視野を広げて研究し、試行錯誤の末に生まれた楽器の中には、時に個性的で素晴らしい作品がある。
この楽器は、とにかくパワーがあり音がダイレクトに飛ぶタイプ。高音弦は華やかでありながら耳に優しく届く。低音は弦をエヴァピラッツィゴールドに替えてから、ずっと深みも出た。また、レスポンスがいいので、速いパッセージを弾いた時でも、全ての音がハッキリ聞こえる。オールラウンドの素晴らしい楽器だった。
さて、気になるお値段は…
£42,000。日本円にして約600万円。
今はBtrexit でポンドが下落(約140円)していたから、この値段で買えた(値引き交渉もした)。お二人ともとても気に入り大満足の買い物だったようで、何より!同じ音高に通う「楽器マニア」のお友達に「なんでそんなに安いの?!」と言わしめた価格だ。
・値段が高いのか、安いのかが分からない!という場合は、過去のオークション結果を調べてみるのも手(Tarisio)。しかし、オークションプライスは市場価格よりはずっと安いし、コンディションによってまちまちなので参考程度に。
・気になる楽器は、他の楽器店に持ち込んで忌憚のない意見を聞くのも大事。
・VAT(消費税)は価格に含まれておらず、ゼロだった。免税を初めから期待しないように!
ヴァイオリンと消費税については、こちらの記事でも触れています。
ロンドンにヴァイオリンを買いに来る人へのアドバイス
- ホテルは、楽器屋さんが集まっているOxford Circus周辺にとる!
- 楽器屋さんとは事前にアポをとっておこう。
- 支払いは高額になるので、クレジットカードやデビットカードより国際送金がやっぱり一般的。マネートランスファーで口座を作っておくと、安く送金できる。
- 日本とは違って「お客さんは神様」ではないので、マナーには気をつけるが、5分~10分の遅れは英国では「遅刻」ではないので慌てずに。
ちょっと自分たちだけでは不安…という人はぜひ霧立までご連絡を!
ちなみに今回立花さんは、王立音楽院でプライベートレッスンを受ける、という体験もしました。私も同行しましたが、アプローチの仕方が日本とちょっと違って面白かったです。
初対面の立花親子と過ごした3日間は、一緒に「音」に集中した特別な時間でした。 購入した楽器 が、立花さんの音楽人生をサポートする、よいパートナーになりますように心から願っています。