安いヴァイオリンを手軽にグレードアップさせる方法
昨日、「子ども用の分数ヴァイオリンを買う時に知っておきたいこと」という記事を書いた。
今日はお約束通り、霧立がユウ(8歳)のために実際買ったヴァイオリンについて書いてみたい。特に、調整がなってない安いヴァイオリンをどうやって簡単にグレードアップさせるかについて書いていく。
安価なヴァイオリン
STENTOR(ステンター)
短期間しか使わない子どもの楽器の場合、安い楽器を買うという選択もあるだろう。
今回ユウは、あと半年くらいでサイズアップしそうだと分かっていたので、STENTOR(ステンター)というメーカーの1/2サイズの安価なヴァイオリンを買った。
そのヴァイオリンはGumtree(ガムトゥリー)という個人間で売買するためのオンラインマーケットに£40で出品されていた。Gumtreeのいいところは、基本的に対人販売なので、実物を見て買えるところだ。そこがインターネット通販と違うところ。
霧立も実際に売主のお宅にお邪魔して、試奏してから決断した。しかし、行ってみたら弓がボロボロだった!フロッグ(弓元)がユルユルで外れていたのだ。毛も半分以上抜けていた。
弓はとても使い物にならないので新しいのを買わないといけないことを話したら、£10ディスカウントしてくれたので、£30(約4500円)になった!
粗悪な調整
しかし家に帰って、もう一度よく弾いてみたら思わぬ問題が発覚。まず2本ずつ開放弦(左指で弦を押さえない)を同時に弾いてみると、「ジリジリ…」という雑音がする。
よく見ると、ひどい調整だった。
- 駒の位置が左にずれていた。
- テールピースがバイオリンに対してほぼ平行で、低すぎた。
- 顎当てがゆるい。
- 駒の大きさが小さすぎる。素材も安物。
あっちゃー…。ちゃんと見て弾いたはずなのに…。安い買い物といえどもショックだった。ヴァイオリンを買う時の注意点はよく分かっていたはずだったのだが、安い買い物ゆえ油断してしまったのだ。
しかし、なんとか改善できるはず…!と調整に乗り出した。
簡単に出来る調整
① 駒の位置
まず駒の位置は計算されてしかるべきところに立てられている。魂柱から3ミリというのが標準だが、音の好みによって若干違うこともある。通常は素人がむやみに動かすものではない。
しかし、中古で安価なヴァイオリンを買った場合、精密に調整されていない場合がある。事実、霧立が買ったヴァイオリンの駒の位置は左にずれていて完全におかしかった。
そういう場合には動かす必要があるが、そうでない限り、普通は傾いた駒を直立させる程度の微調整にとどめておく。
微調整のやり方:
- 慣れていない場合は、まず4本の弦を少しだけ緩める。
- 駒を両手の親指と人差し指、中指でしっかり挟んで慎重に移動させる。場所は左のF字孔の内側の刻み。
- ヴァイオリン本体に対して直角になるように立てる。駒の「両足」がきちんとヴァイオリン本体に立っていることを確認。少しでも浮いていたらダメ。駒を倒さないように注意して!
- 調弦してから、もう一度駒が直角に立っているか確認。
駒の調整の詳しい説明はこちら。
② テールピースの位置を上げる

楽器店でちゃんと調整されている楽器のテールピースの角度。これは霧立のパートナーのEttore Siega氏。
買ってきたSTENTORのテールピースはほぼヴァイオリンと並行でかなり低かった。低すぎると音にも影響する。
子ども用分数ヴァイオリンの場合、4弦全てにアジャスターがついていることが多い。全てのアジャスターを緩めればテールピースは持ち上がる。調弦をした後、駒の位置が適切か確認。響きが断然よくなった!
*4弦全てにアジャスターがついていないフルサイズのヴァイオリンの場合、テールピースの角度をアジャスターで変えるのは無理。
③ 顎当てをしっかり固定する
「ジリジリ」という雑音を出していたのは、顎当てがしっかり固定されていなかったから。金属部分が振動してしまったのだ。下の写真で、顎当てを固定する2本の金属部分に小さな穴が開いているのが分かるだろうか?そこに細い棒などを入れてクルクル回すとしっかり固定できる。

ヴァイオリン本体を傷つけないように注意!
④ 駒を取り替える
左:STENTORについていた駒
右:Stringers of Edinburghの楽器についていた駒
両方とも1/2サイズのヴァイオリンの駒なのに、驚くほど大きさが違うのがお分かりいただけると思う。材質もSTENTORの駒はいかにも安価だということが分かる。仕上げも雑だった。
試しにSTENTORの楽器にStringersの駒をセットしたら、音が大分良くなった!駒でかなり音は変わる。でも、魂柱が倒れるといけないので、絶対に真似しないで下さい。え?霧立はなんでやっているのかって?霧立は一応長年の経験があるし、こういう実験、実は大好きで…。
でも、Stirngerの楽器はレンタルしていたので返さなくてはならないので、駒も元に戻した。
新しい弓
買った時の弓は使い物にならなかったので、いつもお世話になっているStringersで買った。£25(約3750円)。安い!日本より楽器や弓は安いのが嬉しい。これで十分音が出た。結構ビックリ。
まとめ
子ども用の分数ヴァイオリンは、質の高いものが少ない。大量生産品ばかりだが、調整をきちんとすればかなり「ちゃんとした楽器」になることが分かった。(「いい楽器」とは言えないが。)

右側のf字孔の真下から、ボトムまでかなり大きな直線のクラックがある。
Stringersでレンタルしていた楽器は、楽器としてはSTENTORよりよいものだったが、f字孔付近に致命的な大きなクラックがあった。
これは楽器として致命的で、E線の音はひどかった。STENTORは安い楽器だが、簡単ないくつかの調整と新しい弓を買ったことで、結果的にStringersでレンタルしていた楽器よりずっと良くなった!
ヤッター!!
ヴァイオリンと弓、ケースでしめて£55(約8250円)!
この値段にしては十分すぎる楽器になった。しかも、使わなくなったらまたGumtreeで売れる。新しい弓も買ったし、買った時よりいい値段で売れるのでは?
子ども用分数ヴァイオリンは短期間しか使わない。高価な楽器を買わずしても調整をちょっとするだけでずいぶんグレードアップ出来るのでぜひ試してほしい。
ちなみにSTENTOR、日本だとこんな価格。微調整をすれば、子どもが短期間使うには全然問題ない楽器だと思う。どこかで試奏できるといいのだが。