【微調整】ヴァイオリンを買う上で最後にやっておくべきこと
買いたい候補となるヴァイオリンが1~2本にまで絞れたら、より最高な状態に近づけられるかを試してみよう。これによって、最終判断が容易になる場合がある。
弦の調整
最も簡単に音の調整が出来るのが弦の交換。弦の種類はバラエティーの富んでいるので、自分の求めている音色や音量このチャートから選んでみよう。
やっかいなのは、あるヴァイオリンにAという弦がよく合ったからといって、他のヴァイオリンにも同様の効果が期待できるわけではないということ。ヴァイオリンと弦は相性がある。色々試してみるしかない。
ロンドンのJPGuivierでは、普通の楽器にはドミナントを、ある程度以上のクラスの楽器には基本的にエヴァピラッツィゴールドを張っていると言っていた。
迷っている人は、まずはドミナントかエヴァピラッツィゴールドを試してみるのもおススメだ。
*E線は、ボールエンドかループエンドか確認してください。
肩当て
響き
意外なのだが、肩当てでも音は変わる。特に「響き方」の部分に影響する。KUNとピラストロのKorfker Restを比べてみたが、圧倒的にピラストロのKorfker Restが良かった。
音の響きがかなり良くなる。ある時、プロのヴァイオリニストの友人の前で弾き比べたら、
「なにそれ!!全然違う。私も買う!!」
といって、即購入していた。(あとで、「あの値段にはビックリしたんだけど…」と言われたが。)
自分の体形に完全にフィット
あと、自分の肩のカーブにピッタリあうようにカスタマイズ出来るのも魅力。霧立はこれまで、「肩当て」に着け心地の良さを期待したことがなかった。ある程度合えば「こんなもんだろう」くらいにしか思っていなかった。
しかし、Korfker Restはゆっくりと力をかけると、中のファイバーが曲がるために、完全に自分の鎖骨や肩のカーブに肩当をフィット出来るのだ!
軽量
しかも付けているのが分からないくらいに軽量だ。肩当をつけていることを忘れさせる肩当。それがKorfker Restの最大の魅力。長時間練習する人には得におススメ。
見た目がおしゃれ
また、見た目がカッコいい!木製でしかも薄い。いかにも「肩当てついてまーす」とがっちり楽器につかまっているような他の肩当てとは違う。軽量化するためだろう、表面にダイアモンド型の穴がいくつか空いている。これがまたオシャレ。
収納性
足は折りたためないが、ケース(BAM エトワール)内に問題なく収まっている。ちなみに、霧立のこのBAMエトワール(コニャック)とは色も同じで、それが更に気に入っている。
このBAMのケース、さすがはフランス製。とてもおしゃれ。しかもとても軽い!
ケース上部のレザーをぶつけたりして傷つけないように扱っているので、結果的に中のヴァイオリンも守られる!という効果も。
このヴァイオリンケースの色違いはこちらから。どの色もいいなあ~。
消耗品の交換
このKorfker Rest、使い心地は最高だが結構お値段もするので、気になるのは消耗品は別売しているのか?ということ。
問い合わせたところ、ちゃんと個別に購入可能とのこと。ピラストロ本社から直接購入することは出来ないが、提携している卸売り業者に問い合わせれば、近場の小売店を紹介してくれるとのこと。
日本の卸売り業者情報
【Shirakawa Sogyo Co., Ltd.】
Phone 03 3537 2882
Fax 03 3537 2880
E-mail susumu@shirakawaviolins.co.jp
ウェブサイトはこちら。
この優れモノ肩当て、ピラストロKorfker Restはネットでも購入できる。お値段はビックリ(!)な価格だが、まあ響きがあれだけ変わるならと納得して霧立は買った。
というか、ヴァイオリン購入予算(400万円)の中で考えていたので、結構即買いだった。非常に満足している。
顎当て、テールピースなど
顎当てやテールピースの木の素材でも、音色や音量が変わってくる。
柘植(Boxwood):柔らかく温かみのある音。
ローズウッド:澄んだ透明感のある音。
テールピースは自分で交換すると、中の魂柱が倒れる危険性があるのでやっちゃダメ!
(霧立は自分でやってしまって、岡田さんにビビられた。幸い魂柱は無事だった。)
魂柱、ブリッジ(駒)
魂柱とブリッジは「音のつくり」に最も大きく作用するパーツ。これを変えると、劇的に楽器が変わる。
霧立は、自分の希望する音色をお店の人に伝え、Matthew Hardieに新しいブリッジを作ってもらい、魂柱の位置も修理工の人立ち合いのもと、何度も微調整した。
そうしたら…まるで別の楽器!!
岡田さん(昔のオケ友でプロのヴァイオリン製作者)から言われていたけれど、正直ここまで変わると思わなかった。音色だけでなく、4弦のバランスも、レスポンスも改善された。
霧立は音的にはEttore Siegaの方が気に入っていたが、属性はMatthew Hardieに惚れ込んでいたので、なんとかしてMatthew HardieがEttore Siegaの音に近づけられないか、という試みを2ヶ月以上やっていたのだ…!
初めは全然違った音色の2本の楽器だったのに、駒とブリッジ調整後は弾く部屋によってはほとんど区別がつかないくらいまでに近づいた。
松脂
これも岡田さんから教えてもらったこと。松脂なんて、「弓の滑りをよくするもの」くらいの知識しかなかった。また一度買うと何年も持つので、買う時は「ま、とりあえず、一番高いの買っとくか」くらいの選び方。
今考えると、恐ろしく無知!!
松脂で、これまた音が全然変わるのだ。ヴァイオリンは本当に奥が深い。同じメーカーでも「ライト」と「ダーク」の2種類ある場合がある。
ライト:ハチミツ色。摩擦のひっかかりが少なく滑らかに弾ける。音は明るく澄んだ感じ。湿度の高い時でもOK.
ダーク:濃い紅茶みたいな色。摩擦のひっかかりが少しあって、音は落ち着いた温かみのある感じ。高温時には溶ける可能性があるので注意。
岡田さんにおススメ頂いた3つの松脂
【ギョーム(Guillaume)】
ダーク。柔らかい音も出せるし、なめらかさも保っているというバランスのとれた松脂。プロ奏者にも愛用者が多いのが頷ける。
【ベルナーデル(Bernardel)】
ライトタイプで、雑音が少なくなめらかに弾ける。初心者から上級者まで広く愛用者多し。日本の高温多湿にも適応できる松脂。霧立も使っていたが、結構好きだった。
【アルシェ(Archet)】
おそらく日本で一番人気な松脂。粒子がとても細かいので毛にむらなくつき、雑音を押さえた透明感のある音色を作りだす。3種類あり、ヴァイオリン・ビオラ用のソプラノは、キラキラした美しい響きと軽やかな弾き心地。アルトは、柔らかく芯のある温かい音。テナーはチェロ用でで、艶やかで深みのある音。霧立も一度ぜひ使ってみたい松脂だ。
ここまでは日本でも馴染みのある松脂だが、今回は海外で注目されている松脂を紹介したい。(日本ではつい最近やっと販売し始めたとのこと!くわしくはこちら。)
Letherwood
レザーウッド(Leatherwood)はオーストラリアのハンドメイドの松脂。まず、スカイプなどで自分が松脂に求めていることがら(音色や滑らかさなど)を伝えると、なんと自分のオリジナルの松脂を作ってくれるのである!もし、その製品が気に入らなければ返品も可能だ。
最近の雑誌 「Strad」(2018年6月)でも、
かつてなかったほどの、卓越した音色の豊かさと弾き心地。
とこのレザーウッドを評している。
ヴァイオリン用は二種類ある。霧立は両方試したみたので、おそらく日本語で初のレビューをしてみよう!(オーダーメイドとは別に既製品も販売している。)
Crisp:ライトタイプ。艶と透明感のある明るい音。雑音が少なく、発音が非常に良い!
Supple:本当に優秀であったかーいリッチな音色を作ってくれる。発音も良い。ひっかかりの少ない弓に非常におススメ。
両方とても優秀で、粉落ちがとても少ないのもポイント。しかし、これもまた楽器や弓との相性があるので、試してみるほかない。テスターが先のどの日本の販売店でもあるそうなので、試してみるのが一番。
レザーウッドの松脂はこちらでも買えます。
たくさん松脂をつけ過ぎると、ギシギシして雑音が出てしまう。つけ過ぎに注意!
まとめ
ヴァイオリンの微調整は、弦、肩当、顎当て&テールピース、魂柱、ブリッジ(駒)、そして松脂によって可能。
上記の中でベストな組み合わせを探せると、本来楽器がもっているポテンシャルを十二分に引き出し、なおかつ自分の好きな音色が実現できることになる。
しかし、一つだけ微調整で変えられない部分があった。それは、「音の届き方」である。
Matthew Hardieは遠く離れたところにも、一瞬にして矢のようにして飛んでいく音の届き方。きっと大ホールの一番後ろまで届く、ソリストにとっては素晴らしい楽器。
Ettore Siegaは、聴いている人にとって発生源が分からない音の届き方。聞き手は音に包まれるように感じる。ある友人はこれを「陶酔系」と表現したが、まさに夢心地の楽器。
これは楽器の作りに関係する部分なので、微調整ではもうどうにもならない。霧立は、さんざん迷ったあげく、「陶酔系」のSiegaを選ぶことになる。
弾いていても夢心地になれる幸せな楽器であり、調整後も4弦のバランスと倍音がHardieより若干優れていた。
Siegaを購入してから半年が経つ。楽器が当初より驚くほど鳴るようになってきた。これは本当に驚き。ボーナスみたいなもの。
ついでに言うと、この私のEttore Siegaは、ゾフィームターのストラディバリウスととてもよく似た音に聴こえる…。
(えええええええええ?!)
ホントです。
(真顔)
終わり
霧立さん、こんにちは、初めまして。
ヴァイオリン選びと弓選びの記事を楽しく、興味深く拝見しました。
当方アメリカ在住でまさにヴァイオリンを買い替えようと考えているところで、同じような悩みにぶつかっており、かなり参考にさせて頂きました。
演奏者としては、音に重きを置きたいところながら、ヴァイオリンに付きまとう属性(オールド/新作/産地)がどうしても気になってしまいます。こちらにはアメリカ製の楽器も数多く出回っており、それなりに良いものもあり、お買い得であることは間違いないのですが、どうしても選べないのです。。。
最終的には日本に持ち帰ることになるので、日本ではほとんど価値が認められないのだろうなと感じてしまいます。日本でどこのヴァイオリンかと尋ねられたときに、「アメリカ製」と答えたときの反応が心配で(笑)。
今からヴァイオリン探しの旅に突入するのが、ワクワクする反面、億劫でもあります。欧州にはない新しい発見があったらお耳に入れますね。
ちなみに使っている弓は、所有しているヴァイオリンよりはるかに高価で、お気に入りです。ですからこの弓に合うヴァイオリンを探したいです。ただし、この弓はしょぼいヴァイオリンを美しく、力強く鳴らせるパワーを持っているので要注意ですが。弓の影響ってヴァイオリン本体より大きいのでは? と思うほどです。
KenKenさま
こちらこそはじめまして。
そしてコメントをどうもありがとうございます!
KenKenさんもヴァイオリンをお探しなのですね。それを聞くだけでこちらまでワクワクしてきます!
音を重視しつつも属性が気になってしまう、というのはよく分かりますよ。ヴァイオリン選びの旅を終えて、「自分が納得したものを購入するのが一番!」というのが私が強く思ったことです。
人によって価値観はそれぞれですよね。
私の音楽仲間には「音だけが全て!」という人もいます。でも、「見た目も大事」という人もいますし、「属性も音と同じくらい重要」という人もいます。
誰が正しいということはないと思います。その楽器を買って使うのは自分ですから。
シカゴシンフォニーの楽団員で、上質な新作アメリカ製のヴァイオリンを使っている人は結構いると聞いたことがあります。良ければ買う、というのは合理的なアメリカ人らしいなと思いました。
マナブ(夫)の友人が、シカゴシンフォニーの楽団員から評価を得ている同じ製作者から買ったヴァイオリンを持っていたそうです。マナブによると、そのヴァイオリンはとてつもなくいい音がしたそうですよ!
新作のアメリカ製の中には、時に素晴らしいものがあるようですね。楽器製作のコンクールを見ていても、アメリカ人製作者が金メダルを取ることはよくありますね。
でも、日本で将来売却をお考えなら、属性は重要になってくるかもしれませんね。日本ではイタリア産がダントツ人気ですから…。
私も初め、いわゆる「イタリア信仰」が強かったのですが、いろんな国の楽器を弾くうちになくなりました。私が試奏した中で最も素晴らしかったのは、17世紀のオランダの楽器でした。(予算オーバーで買えませんでした。)
最終的に買ったのは奇しくもイタリアの楽器でしたが、属性でいえば私はスコットランド産のMatthew Hardieのほうがずっと好きでした!
ところで、KenKenさんの弓が霧立は気になっています(笑)。というのも目下弓探し中なので…。
よろしかったら、どんな弓なのか教えていただけると幸いです!
またアメリカのヴァイオリン情報も何かあったらぜひ教えてください。
KenKenさんが納得のいく、素晴らしい楽器が手に入るといいですね!
霧立灯
霧立さん
早速のご返信ありがとうございます。
オケとかカルテットの音は、欧州系が好きなので、アメリカ製が引っかかってるのかもしれません。日本では全く目にしないですしね。
弓についてですが、霧立さんとはいろいろとレベルが違う(腕とか価格帯とか)と思いますので、ご参考になるかどうかはわかりませんが、私はベルギーのGuillaumeの弓を使っています。これは100%音質だけを考えて選びました。
今回、尋ねられて弓の刻印を確認したぐらい、生産者とか生産国はどうでも良かったです。とにかく明確な音のイメージがあり(密度感があり艶やかな音)それを出せるものを1年ぐらい探し続けました。杢が綺麗に出ているのもお気に入りです。
最初は腰にこだわって、腰が強すぎるのを買ってからあとで少し弱めたものに買い替えました。それでもかなり強めであることに変わりはないですけど。
ちょっと調べてみましたけど、私が買った十数年前に比べると倍ぐらいに値上がりしていてびっくりしました。
霧立さんが良い弓に巡り合うのの参考になれば何よりです。
KenKen
KenKenさま
さっそくの弓情報、ありがとうございます!
Guillaumeというのは、Pierre Guillaumeのことですよね?
バザンなどの巨匠の弟子で、現代の弓製作者としてとても評価されている人ですよね。
ベルギーはフランスの隣なので、フレンチメイカーから直接的な影響を受けていそうですね。
素晴らしい弓を持っていていいですね~。ご近所にいたら、ちょっと試させてもらいたいくらいです(笑)。
確かに弓は10年前の値段を見ると、これから買うのが嫌になるくらい値上がりしていますよね。
5本持っているプロの友人は、年を取ったら高く売って老後の足しにすると真顔で言っていました。
しかし、KenKenさんは1年かけて探されたんですね。すごい!
ヴァイオリン選びがおっくうになるというのは、そういう背景もあったのかもしれませんね。
でも分かります。楽器選びは正直神経が疲れますよね。
欧州系の楽器の音が好きなら、ロンドンに買い付けに来るのも手かもしれません。ロンドンはヨーロッパで一番楽器が集まる場所だと言われています。
ご旅行がてらならプレッシャーも少ないかも?
私の腕前はそこまで大したことありませんよ!
お互い、よい楽器に巡り合えるといいですね。
霧立灯