子ども用の分数ヴァイオリンを買う時に知っておきたいこと
このページに来られたということは、お子さんがヴァイオリンを始める(始めた)ということですね!おめでとうございます。
ヴァイオリンは楽しいですよ。でも、「楽しい!」と思えるまでに何年もかかります。ピアノと違って、正しい音程できれいな音が出せるようになるまでが辛抱なんです。
楽器選びは、その「楽しい!」と思えるようになるまでの道のりを短くしてくれる可能性を秘めています。今日は、子どもの分数ヴァイオリンの選び方について書いていきたいと思います。
ヴァイオリンのサイズ
ヴァイオリンのサイズは4/4をフルサイズとして、1/16、1/8、1/10、1/4、1/2、3/4と大きくなっていく。子ども用ヴァイオリンを「分数ヴァイオリン」と呼ぶ理由はここにある。
小さい子どもはずんずん大きくなるので、初めの方はすぐにサイズアップが必要だ。
目安としては、ヴァイオリンを構えた時、スクロール(ヴァイオリンの一番てっぺんの渦巻になっている部分)を楽に握れるサイズが望ましい。
サイズチャートはこちらのサイトが詳しいので、ぜひ参考にしてほしい。
買い替えるのが大変だからという理由で、「洋服のように大きめを買う」というのはヴァイオリンにはおススメできない。特に初めは、ちゃんとした姿勢で弾くことを覚える大事な時期。適切なサイズのヴァイオリンを選ぼう。
初めはレンタルという選択肢も

(背中がいたいのよね。いやんなっちゃう…)
ヴァイオリンは、とにかく初めが大変!我が家のユウも、初めの1、2か月は、「体が痛い」「腕が疲れる」と言って15分のレッスンをするのがやっとだった。
ヴァイオリンを正しく構えることすら、初心者には難しいのである。楽に構えられるようになるまで「体の模索期間」があり、初めは音を出すことすらままならない。
ヴァイオリンは初めの1年が試練。これを乗り越えられない可能性も十分ある。少なくとも初めの数か月は楽器をレンタルして、続けられそうか様子を見るのも一案だ。
我が家のユウは初めの3か月レンタルしたが、イギリスだとレンタル料は安く、保険料も入れて3か月で6,000円ほどだった。
日本で手頃な値段でレンタルをしていたのは、島村楽器。
1か月¥3,024
最長レンタル期間は18ヵ月間で、この期間レンタルすると、楽器が自分のものになる。
楽器のクオリティーは、あの葉加瀬太郎氏お墨付き。
子どもにもちゃんとした楽器を
次に、子どもが続けられそう、と分かったらちゃんとした楽器を選んであげたい。
もちろん、いつまで続けるか分からない子どもの場合、初めから高価な楽器を買うわけにはいかない、というのは分かる。また、子どもの場合、成長とともに2年くらいのサイクルでサイズアップしていかなければならない(年齢が小さければもっとこの期間は短くなる)ことを考えると、一つのヴァイオリンにそこまでお金をかけられないというのも当然だ。
高価でなくてもいい。しかし少なくとも「ちゃんとした状態のヴァイオリン」を用意することは、とても重要だ。
なぜなら、ちゃんとした音のでる楽器は上達を助けるからである。初めにも書いたように、楽器次第で「楽しい!」と思えるまでの道のりが短縮できる可能性が十分あるのである。

「ヴァイオリンが楽しい!」と思えるようになれればしめたもの。後はぐんぐん上手くなるはずだ。
でも、「どうして、ちゃんとした楽器だと早く上達するの?」と疑問をもつ読者もいるだろう。具体的な理由は次のようなことだ。
「よい音」を知ることが出来る
自分の出している音を聞くことなしに上達はあり得ない。そして、よい音が出ないヴァイオリンだったら、そもそも「よい音」が何かも分からないままだ。
現実には子供用の分数ヴァイオリンで良い音が出る楽器は、ほとんどない。しかし、調整もめちゃめちゃな、おもちゃのような音しか出ないヴァイオリンは避けたい。

分数ヴァイオリンは、なかなかいい音が出ない。表板の厚みが、体積のわりにどうしても厚めに作られているからだ。
1/4以下のサイズのヴァイオリンは、残念ながらあまり期待できないかもしれない。ヴァイオリンはサイズが大きくなるほど響きも表現力も豊かになる。
1/2以上からは、ちゃんと調整されたよい楽器を買えば、そこそこいい音が出るようになる。
練習が楽しくなる
よい音が出れば出るほど、弾くのが楽しくなる→練習がしたくなる→上達が早くなる、という好循環が生まれる。
ちゃんとした音が出ないヴァイオリンでは、弾いていても楽しくないので、すぐやめてしまう確率が高い。
耳が良くなる
ヴァイオリンはピアノと違って音程を自分で取らなければならない。音程を聞き分ける耳が不可欠である。そしてその耳は多くの人の場合、初めから備わっているのではなく、練習の中で習得していくものである。
安価なヴァイオリンにはスチール弦が張られていることが多い。しかし、ヴァイオリン製作マイスターの佐々木氏は、安価なスチール弦は倍音が出にくく音程を取るのを難しくすると言っている。
弦の交換は簡単だ。佐々木氏はナイロン弦を使用することを薦めている。どのヴァイオリンにも定評があるのはドミナント!
購入する時の注意
先生に相談
高価なヴァイオリンを買う時は、誰に相談するかはかなり慎重になった方がいいのだが、子どもの場合は習っている先生に相談するのがよいだろう。
サイズアップの適切な時期などもアドバイスしてもらえる。また同じヴァイオリン教室の生徒の中で楽器を融通しあえるメリットもある。
楽器店で買う
ヴァイオリンをちゃんと弾ける人と一緒に行かれると心強い。そうでなくても、楽器店には弾ける店員が必ずいるので、試奏をお願いしてみるといい。
子どもがある程度弾ける場合は、本人に弾かせてみるのが一番。最近の発表会で弾いた曲などを弾くのがいいだろう。
楽譜がないと弾けない場合は、楽譜を忘れずに持っていく!試奏室で何を弾いたらいいか分からず、うろたえている親子がよくいるという。
ヴァイオリンの内部に貼ってあるラベルは気にしないこと。数百万円レベルの楽器でないかぎり、ラベルに神経質になることは意味がない。安価な楽器は大量生産されたもので、ヴァイオリン製作者の工房で手作りされたものではないからだ。
またヴァイオリンは他の商品と違って「新品」かどうかは全く関係ない。むしろ新品は音が出にくいので、中古品のほうがよい場合が多い。「新品!」というセールストークに惑わされないように!
インターネット通販で買う

ヴァイオリンの良し悪しはオンラインでは分からない。
これは、絶対にやめたほうがいい。ヴァイオリンは買う前に必ず手に取って、よく見て、そして弾くことが大事。(弾けない場合は誰かに弾いてもらう。)
ある人が「きれいに見えたから買ったんだけど…」といってインターネットで買ったヴァイオリンを見せてくれた。そうしたら…寸法がめちゃくちゃだったのだ!
指板の長さが極端に長い。だから指板から駒、駒からテールピースの間が極端に短い。見たこともないような「ヴァイオリン」だった。
そして…音は全く鳴らなかった。どんな世界の一流ヴァイオリニストが弾いても、全く弾けないだろうという悲しいシロモノだった。
まとめ
「ちゃんとした楽器」というのは、
- 子どもの体にあったサイズであること
- ちゃんとした寸法で作られている楽器であること
- 安くても調整された楽器であること
と言える。
調整については今回あまり触れられなかったので、次回もう少し詳しく書いてみたい。実際、霧立がユウのためにどんな楽器を買ったかもレポートする。